木蘭の涙 (ページ9)

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「いい天気ですね」

静かな縁側で、低くて綺麗な声が耳を霞めた

『松村、さん』

「…なんで僕だけいつまでも " さん " 付けなんでしょう？(笑)」

そう言ってフッと笑うと隣に並ぶように腰掛けた

『なんで………だろ？』

「慎太郎みたいな感じでいいんですよ」

『それは………ねぇ、』

だって、なんか松村さんの雰囲気って
何処か躊躇ってしまうものがあるんだもん

…………なんて、言えないけど

『慎太郎とかは、もう長いから……
それにこんなに近いところに新しい人が付くなんて異例』

「そうですか……なんか逆に気遣わせてますよね…」

『え、そうじゃなくてっ…えっと…』

気遣ってないって言ったら嘘になるけど…、
でも別にそれが嫌なんじゃなくて…

「何ですか？」

言葉に詰まると、少し微笑んだ顔で
覗き込むように見てくるその視線が
また私の鼓動を揺らす

『なんか、緊張する…けど一緒にいたい、みたいな…？
慎太郎とかは、緊張しないから一緒にいたい、なんだけど…』

「プッ……」

『何で笑うの？！』

しどろもどろになりながら
まだ纏まってない考えをそのまま伝えると、
吹き出して肩を揺らしている

と同時に、あ、こんな笑ってくれる人だったんだ………

なんて新たな発見

慎太郎が全然喋らないとか言ってたけど、
…………それ慎太郎が嫌われてるだけじゃないの？

「…………僕もそう思ってますよ」

『え、偶然』

「そうですか？(笑)」

『うん、こんな意味不明な事言っても
絶対伝わらないと思ったから』

「たぶん僕が同じだから分かるんですけどね、」

そう言って笑ったあと、
優しい顔でこちらを向き、視線が絡む

ドクン、と一際大きな音が鳴った

え、何…

心臓が身体の奥の方で大きく鼓動した

「お嬢さん？大丈夫ですか？！お顔が熱っぽい…」

松村さんの手が頬に触れる

そっと触れたその手に、
段々と速くなっていく鼓動

『あ……っ…な、何でもない！』

そう言って逃げるようにその場を後にした

……触れられた場所が……熱い…………

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