木蘭の涙 (ページ8)

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『あ、松村さん』

「おはようございます」

今朝は起きてから１番に会ったのが松村さん

洗濯物を干しているようで、
風に揺れる真っ白なシーツが
松村さんの漆黒の髪と瞳が、なんだか映える

彼が此処へ来てから多分もう二週間は経ってる

………なのに、まだ慣れない

イキナリ会ったりしたら
ドキーッてなるし(お化け屋敷かっ)

やっぱり慎太郎とか樹より気遣う

たまたま用があって来た慎太郎を
とっ捕まえて、盛り上がるのは松村さんの話

『でもね、たまにすっごい優しい笑顔になるんだ！』

「ほぉー僕らはそんなん見た事ないですね」

最初出会った時、花を見上げる
あの横顔のようで
なんだか心臓をきゅ、っと掴まれたような……

少し苦しいんだけど……何だか嬉しい、みたいな

…………私もよく分かんないけど

それから、Aと北斗が二人になる事は少なくなかった

その度色んな表情を見せていく北斗と、

そんな北斗に惹かれっぱなしのAがいた

そんな二人を傍で見ていた慎太郎の元に、
後ろから声をかけるのは樹

「なぁ…、慎太郎？」

雲掛かった声で樹が呼ぶ

「何…？」

「松村と、お嬢さ… 「樹！」

慎太郎は最後まで言わせまいと樹の言葉を遮った

眉を寄せて少し怒っているような……
そんな表情で……

声をかけた樹は眉が下がって
視線は下へ落ちていく

「…まだ考えんな」

慎太郎は小さく首を振る

「けど…このままだと…、」

「俺だって、二度も見たくない…」

そんな会話をしてる二人が、
遠くからちらりと見えた

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