木蘭の涙 (ページ6)

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『………ん？』

少しだけ庭園内を歩いて、戻ってくると、
庭園に見た事無い人がいる

…って樹が言ってた新しい人か

さっき私が綺麗だと思って見てた
花の前で立ち止まったまま

『この木、綺麗ですよね』

ゆっくりと近付いて、声をかけてみる

「えっ、あ…はい」

慌てたように振り返ったその人は
人見知りなのか……視線がうろうろして
なかなか合うことがない

『さっき私もこうやって見てたんです』

それでも同じ木を見ていた嬉しさからか、話を続ける

目線を合わせられないのなら
私が外せばいい

仕えてる人達にはやりやすい環境で働いて欲しい

そう思って視線を外して、
同じように木を見上げる

「見てましたよ、さっき」

そんな言葉が返ってきて、驚いて視線を戻す

今度はパチリ、と視線が絡む

逸らされることのない視線は交わったまま

『え… あ……「あ、ここに居たんですか！」

言葉が出ない私が、かろうじて出した声に
重なるように慎太郎の大きな声が響く

『……ど、どしたー？』

慌ててそう返すと、駆け寄ってきた慎太郎は
探していたのか……少し息が切れている

「京本さん、お見えになられましたよ」

『あ、それで。ありがと』

ちらりと彼を見ると、軽く頭を下げ、
室内に戻っていく

その背中を視線で追いながら
慎太郎に連れられ、そこを後にした

『ねぇ、さっきのがウワサの新しい人？』

客間に向かう道中、
慎太郎にそう問いかけると
" え！ " と、大きな声で驚いた

「すごい情報早いですね(笑)
あいつもこれから側近になるんです」

やっぱりそうだったかぁ、

『へぇ～……名前は？』

「松村北斗って言う奴です」

『松村、北斗さん…か』

私を真っ直ぐに見たその瞳は
吸い込まれそうなほど綺麗だった

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