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『ね…、北斗…?』
「…ん?」
自分から出た声は思ったよりも小さく出た
それを聞き取ってくれた北斗は
優しく聞き返す
『…今頃、どうなってるかな…』
「A…」
私達が町を離れてから随分の時が経とうとしていた
あの父上が黙っているとは思えない
不安なのが表情に出ていたのか、
北斗はただ優しく抱き寄せてくれる
「…後悔してる?」
『…ううん…、』
優しい北斗の腕の中で
首を横に振って、私は幸せそうな笑顔を見せた
『…このままずっと…、永遠に二人でいれるかな…?』
「A…そのために来たんだろ?
…俺は、何があってもAの傍にいるよ…
いつまでも、離さないから……」
『…北斗……』
私達の生活は、元々の裕福な暮らしとは
正反対と言えるほどギリギリだった
食べる物すら充分にはない
いつしか私は見て分かるほどまでに痩せていた
そんな厳しい生活の中でも幸せを感じていたのは、
北斗も同じだったのだろう
激しく求め合う私達の愛は、
弱まりを見せるどころか更に深く燃え上がっていった
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やがて日は過ぎ、ある朝の事だった
「A…?A…っ!…どうした?!!」
俺が目を覚ました隣ではAが苦しそうに魘されていた
汗だくになったAを抱き寄せると高温の熱が伝わる
『…ほく、と…っ…苦し…吐きそう……っ』
「A…っ…大丈夫か?!すぐに楽にしてやるからっ
…A…っA……!」
『…北斗……っ……』
Aは縋るように俺に抱きつく
必死に悶えるAの手をぎゅっと握り締めてから、
俺は町医者を呼ぶ為に駆け出した
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あい - このお話大好きです! (2022年10月2日 12時) (レス) id: 72d1a3d1f4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リナリア | 作成日時:2022年7月31日 1時