木蘭の涙 (ページ40)

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『ほ、くと……？ホントに北斗……？』

幻かと思った

その目に光る優しい涙さえも、綺麗な幻影なのかと

オレンジ色に染まった河川敷で、
北斗は私にそっと口付けようとする

『北斗っ……駄目っ……』

私は必死に涙を堪えながらその唇を拒んだ

自分でとった行動なのに、急に涙が溢れる

「A……」

眉を下げて悲しそうな北斗に、
込み上げてくる雫

『また…忘れられなくなるの………
私、ずっと北斗の温もりが消えなくて…っ
思い出すたび辛くて………
今日も、きっとまた抱かれた分だけ…っ……』

張り裂けそうな胸の内がぽつぽつと零れていく

それは北斗の表情の切なさに拍車をかけた

抱き締めていた身体を少し離そうとする北斗

「A…？」

『いや……離さないで…っ』

裏腹な行動に自分自身戸惑った

それは北斗も同じだったようで
少し狼狽えている

私の身体は北斗の腕の中から離れようとはしなかった

頭では分かっていても、私にはどうしても出来なかった

その温かい体温に、その愛しい腕に包まれて…

身体が北斗を求めていたから

「A…もう離さないから…っ」

いつの間にかぽろぽろと零れていた雫を
北斗はそっと拭いとって私を強く抱きしめる

熱い口付けに変わる瞬間、
北斗は人気のない河川敷の奥へ
手を引いて少し強引に連れてきた

そして少し柔らかい草の上に私を押し倒した

「もうどうなってもいい…好きだ…、愛してる…」

『……北斗っ』

夕陽は沈み、辺りが暗くなり始めた時刻だった

静かなこの場所には、
熱い身体を重ね合う二人の愛だけが響いていた

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