木蘭の涙 (ページ38)

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そのすぐ後、河原まで来ていた私は
川遊びに夢中になっている子供達の相手をしていた

きゃっきゃ、と笑う無邪気な子供達は
私の心を癒してくれた

「お姉ちゃんありがとう！！」

『いいえー、楽しかった？』

「うん！とっても！また遊んでね！！」

夢中になって遊んでいたのは私も同じだった

何も考えなくていいように

追いかけた面影を振り切るように

……気が付くと、いつの間にか空は夕焼けを帯びていた

子供達とは別れ、少し濡れた着物を整えて
私は帰路を辿り始める

「あ、これお姉ちゃん忘れたのかなー…？」

同じ頃、ほんの少し離れた場所には北斗の姿があった

腰を下ろしてぼんやりと空を見上げていると、
どこからか小さな石ころが自分の隣へ転がってきた

「お兄ちゃーん！ごめんなさい、当たらなかった？？」

小さな女の子を目の前に、
北斗は大丈夫、と優しく笑ってみせた

「お兄ちゃん、一緒に遊ぼうよ！」

女の子に言われるまま手を引かれ、立ち上がると
ふと目に止まる物があった

「これ……」

女の子の胸のところには、赤い髪飾りが刺さっている

「これね、さっき一緒に遊んでもらったお姉ちゃんが忘れてったの
すっごい似合てたから返してあげたいんだけど……
また会えるかな…？」

この髪飾り

赤い木蓮の…………

A―――

鼓動が大きく音を鳴らした

「……そのお姉ちゃんとは、いつ遊んだの？」

あまりの出来事に声が震える

逸る気持ちを抑えて女の子に問い掛けた

「ついさっき！お兄ちゃんと会う前まで
お姉ちゃんが遊んでくれてたから」

「お姉ちゃん、どっち行ったか分かる？」

「うん、あっちの方！」

「ありがとう！！」

「え？お兄ちゃん？！」

俺は夢中に女の子が指した方向へと走りだした

「A…、お願い…待ってて…」

心の内は自然と言葉へと化し、
ただひたすらAの姿だけを探した

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