木蘭の涙 (ページ26)

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屋台が並ぶ人込みの中、京本さんと私は並んで歩いていた

夜店で食べる物を買ったり、
金魚すくいをしたり、二人で色んな事をした

どこにいても、何をしてても、
思い浮かぶのは北斗の顔で
終始、苦笑いをする他なかった

ふと通りかかった屋台で、赤い花の髪飾りが目を引いた

『………もくれん？』

「え？」

『あ、何でもないです！』

一際輝いて見えた物は、北斗と見た木蓮の花の形をした髪飾り

綺麗、と心の中で呟いて一人微笑みを浮かべた

『とっても楽しかったです』

北斗と来てたらもっと…、と心の中で付け足した

北斗と京本さんを比べてしまう事に
ただならぬ罪悪感を感じていた

それは恋愛感情こそ無いものの、京本さんの事も好きだったから

帰路を辿る中、京本さんの手がふわりと重なり、歩みを止める

それにつられて足を止め、ゆっくりと振り返ると、
京本さんは真剣な顔をして、私を見据えていた

「………結婚の日取り決まりましたね」

京本さんの口から出た意外な言葉だった

一瞬、頭が真っ白になった

震えそうになるのをぐっと堪える

それでも明らかな動揺を隠せていないだろう

ただ京本さんの次の言葉を待つ事しか出来ない

「来週です」

来週

『そうですか、もうすぐですね』

精一杯の笑顔を向け、胸の鼓動を押し殺すように言い切った

そこからはどうやって帰ったのかなんて
全く覚えていない

気付けばあの木の下にいた

『嫌だよ………北斗……っ』

一人きりの庭園でただ涙を流し続けた

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