木蘭の涙 (ページ21)

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『絶対怒られるぞー？
お前が付いときながら何してたんだ！って』

「僕がハメられた方でしょう？！
お嬢さん自分からハマってましたし！」

先程の光景を思い浮かべながら
手を繋いで河川敷の道を辿る

『…………ねぇ、もう " お嬢さん " って呼ぶのやめて？』

「え？」

突然低くなったトーンに、松村さんは立ち止まる

繋いでいた手が引っ張られて、足が止まる

『敬語もダメにしよっか、』

「えぇ、ちょっと待ってください！」

振り返って、口角が緩むのを隠しきれなくなって
笑いながらそう言うと
焦ったように……でもどこか嬉しそうに
そう言う松村さん

『ほら、呼んでみて？A、って』

突然の事に松村さんは戸惑いを隠せない様子だった

『………ほく、と』

「…A…。」

北斗、と少し震えた声で呼ぶと
恐る恐る名前を呼び返す、真剣な眼差しが
痛いほど眩しかった

『でも、二人の時だけよ？』

「分かってま…いや、分かってる！」

『今 " 分かってます " って言おうとしたー！』

そうやって二人で笑い合っては、
幸せそうな会話を繰り返し歩いていた

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『ただいまぁー』

いくら昼間は暖かいとはいえ、まだ春先

ぶる、と少し震えた身体を擦りながら
屋敷の敷居を跨ぐ

「お帰りなさいませ！
………ってその格好、どうしたんですか？！」

出迎えてくれた慎太郎は
二人の格好を見るなり物凄い声を上げた

『松村さんに川ん中ハメられたー』

「違いますよ！！お嬢さんがね、
僕の事川に突き落としたんです」

『え～、人聞き悪い事言わないで？』

「いやいや、お嬢さんこそ！」

クスクス笑い合う二人を見て、
慎太郎はどっちでも一緒です！と笑いながら言った

「そんな事より、お嬢、早く着替えた方がいいですよ！」

『え？なんで？』

急に真剣に言いだした慎太郎にそう聞き返す

「今京本さんがお見えになられてますから！」

『…………え？！』

一気に現実に引き戻された気分になった

北斗の方を見ると、やっぱり同じで浮かない顔……

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