木蘭の涙 (ページ15)

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「そうですか………
で、なんでそんな暗い顔で仰るんですか」

『分からない……』

京本さんと町へ出て帰ってきた後、
庭園にいた松村さんと話をしていた

……近況報告みたいな、こんな会話が日課になっていた

ふと松村さんを見ると、
あの木を見つめていた

その横顔はとても優しくて
その瞳に映る木が、 " 羨ましい " とさえ思うほど

…………木が羨ましいって……
私……末期かもしれない

『松村さん、この木ホントに好きなんだね』

初めて松村さんを見た日もこの木を眺めてた

「はい、春になると綺麗に咲くんです
これを見ると春だなーって実感したりするんで」

『も・く・れ・ん？』

私はプレートに書かれた名前を読み上げる

「そう、木蓮」

『…私も、この木好き』

満面の笑みを浮かべてそう言った私を見て、
北斗にもそれが伝染するかのように笑顔になった

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―――木蓮の木の下で、初めて君を見た

その綺麗な蕾に負ける事なく輝いていた君に、

僕は一目惚れをしたんだ

君はいつも無邪気にその笑顔を振りまいては

僕の胸を締め付ける

決して許される事のない恋、

そう、

愛してはならない人を愛してしまったーーーーーー

「月が綺麗に出ていたらもっと綺麗に見えるんですよ」

『じゃあ今夜見に来よっかな？』

……北斗にとって、儚く淡い恋だった

ただ傍にいれるなら、

その笑顔を見る事が出来るのなら、

何も望まない

切なすぎる恋心は、時と共にただ募るばかり

…しかし、それは確実にAの心までも揺さ振っていた…

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