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「今でも……あの人の事しか愛せないのよ…」
そう話し始めたお姉ちゃん
樹とお姉ちゃんが出会ったのは今から10年前のこと
樹がこの家に来てまだ間もない頃、
ひと目で二人は恋に堕ちたらしい
お姉ちゃんの口から樹の話を聞いていると、
胸が締め付けられるような想いで
いっぱいになるような事ばっかりで……
……ホントに二人が愛し合ってるのが
手に取るように伝わってきた
そして、二人の結婚が許されなかった事
そして、お互いが別々の人と結婚した今でも、愛してる事
……それでもどうする事も出来ない社会が現実にある事
お姉ちゃんの目からはとめどなく涙が溢れていた
泣き疲れたのか、眠ってしまったお姉ちゃんの隣で
心から幸せになってほしいと思った……
カラカラ、と窓を開ける音が鳴る
『なんでかなぁ……』
部屋の窓辺に頬杖ついて
ほんの少し欠けた大きな月を眺める
使用人との恋、
それを許すはずのない父上
トントン拍子に決まった、二人別々の縁談
…………世の中は厳しい
お姉ちゃんも樹も、こんなに愛し合ってて
何で一緒になれないのだろう
月に照らされながら、私は涙が止まらなかった
.
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『朝早くから来てくださったんですね』
結婚の話も現実化してきたのか、
京本さんは毎週決まった日に顔を出す
「会いたくて、来ちゃいました」
そう屈託のない笑顔で笑う京本さん
京本さんの事は、嫌いじゃない
優しくて良い人だから好きだ
でも……どうしてだろう
心が動かない
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あい - このお話大好きです! (2022年10月2日 12時) (レス) id: 72d1a3d1f4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リナリア | 作成日時:2022年7月31日 1時