木蘭の涙 (ページ1)

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木蘭の涙ページ1

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時は遡ること、うん百年ーーーーー

この辺りで椎名家と言えば、知らない者は居なかった

支配階級として特権的地位を持つ、
所謂、主従関係の上層部と呼ばれる家だった

『あー……、暇だぁ………しんたろー！』

「いやいや、僕は忙しいですよ(笑)」

うちに仕えるこの男、森本慎太郎は、
多分側近に位置する

なぜ " 多分 " ？

…そう見えないから？(笑)

多数居る使用人の中でも、私は慎太郎が一番好きだった

優しいし、色々聞いてくれるし、
もう家族みたいな感覚なのかな？

『ねぇねぇ、私にもその仕事手伝わして？』

縁側に座り、慎太郎がやってる……
剪定？水やり？…………土いじり？を
見ながら足をブラブラさせてそう言うと

「何言ってるんですか、お嬢！
そんな事させたら僕首飛ぶじゃないですか(笑)」

なんて笑いながらあっさりと拒否される

まぁ暇すぎて聞いただけで
実際やるつもりは毛頭ないけれど

『何よ、ケチ(笑)』

「はいはい、何とでも言ってください(笑)」

軽くあしらわれながら、慎太郎のやってる
作業をぼーっと眺める

『…ねぇ、慎太郎？』

少し声のトーンが低くなったのに
違和感を感じたのか、
手を止めてこちらを見る慎太郎

「何ですか？」

きょとん、とした顔でこちらを見る慎太郎に
何となく話しずらくて目線を逸らす

『今日うちにくる " 京本 " って奴知ってる…？』

今日私には縁談話が持ちかけられているのだ

もちろん格式のある武家の息子さん

「いや、僕はまだお会いしてないですけど…」

そう言った慎太郎をちらりと見ると
もうこちらからは視線を外して、
また作業を再開していた

『どんな人なんだろ…』

ぼそ、とそう呟くと
慎太郎は空を見上げて少し微笑む

「お嬢もついにお嫁に行くんですねぇ～」

…………いや、死んでないし、空見るなよ

『……うーん、やっぱそうなんだ…』

突っ込みたいのは山々だけど
私の予想は慎太郎と同じだったようで
小さくため息が漏れる

「おめでたい事ですよ！」

『えー、めんどいよ…(笑)』

にこにこしてそう言う慎太郎に
苦笑いを零す

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