Forget-me-not 2 (ページ10)

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つくづく自由な会社だな、なんて思う

まだ皆が仕事している中、
母とのんびりドレスを選びに来ているなんて……

西条家、というだけでそれが通用するのだから
こういう時だけは西条家で良かったな、なんて
都合のいい考えが浮かぶ

「A、この色なんてどう？？
メンバーカラーなんでしょ？
ちゃんと調べてるわよー♡」

ご機嫌な母が持ってくるのは
黄色のドレスばかりで思わず笑いが零れる

『ん、じゃあ着てみるね』

その手にある淡い黄色のドレスを手に取り、
試着室へと入っていく

扉の外では母の楽しそうな声が聞こえてきて
気楽でいいなぁ、なんて思ったり

着てみたこのドレスは案外しっくりきて、
即決でこれに決めた

「あら、もう脱いじゃったの？
片寄くんに見せなくていいの？」

『涼太、今忙しいから……
じゃあ私、仕事に戻るね』

根掘り葉掘り聞かれる予感がして
逃げるようにここから去った

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オフィスに戻ると、待っていたかのように
伊藤さんが近付いてくる

「今日はありがとうございました！
また土曜日もお願いしますね！」

答える隙も与えないほど捲し立てるように
言って去って行った

『……え、あ、……土曜……？』

休日出勤だったっけ？と一瞬考えたが
私に限ってそれはない

そもそもそんなこと兄が許さないだろう

パラパラとスケジュール帳を開く

『……如月社長のパーティー……？』

もしも、伊藤さんが手紙の人なら……
何か仕掛けてくるはずだ

パタン、と閉じた音が耳に残った

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