Forget-me-not 2 (ページ25)

今日:2 hit、昨日:7 hit、合計:8,655 hit

. ページ25

.

最後に涼太の姿を見て、迎えに来た柴田の車に乗る

「……お帰りなさいませ、お嬢様」

『……、』

少し泣きそうになるのをぐっと抑え、
窓の外に視線を向けた

長い道のりを一睡することなく車に揺られ、
ようやく辿り着いた我が家に小さく吐息が漏れる

「……Aっ！！」

家の門をくぐり、玄関前に車を横付けすると、
少し焦った様子の父と心配してなさそうな
にこにこの母が出迎える

「……リビングへ来なさい」

それだけ言って踵を返す父に、
困った顔の母が小さく頷いた

両親が椅子に座ると同時に頭を下げる

『お父様、私の籍を抜いてください』

「……なっ！」

突然の申し出に空気がピン、と張り詰めた

" 法的に実の親子の縁を切る方法はありません。
親の戸籍を出て新戸籍を作っても、
単に別になるだけで、親子関係には影響しません。

ですが、それは普通の家庭ならです。
西条家となれば話は別です。
……失礼ですが、体裁が大事な西条社長なら
さすがに止めると思います。

結婚すれば必ず籍は抜けますが、
嫁入り前に籍を抜けられたら
社長にとっても危うい展開になるでしょう。

世の中、『分籍すれば、親と縁が切れる』
と思いこんでいるのも事実です。
" 縁を切られた "なんて思われれば
社長の体裁は悪くなるでしょう。

だから、それを使うんです！！"

と、長々と説明してくれた伊藤さんは
どうやら味方のようで……
父の性格を分析した上、
交換条件まで示唆してくるなんて……

まぁそんな話は置いといて、
目の前で固まっている父は
色々体裁について考えているのかな、渋い表情をしている

「そんなこと……出来るわけないだろう」

『なら、婚約者の件は白紙に戻してください』

ピキ、という音が聞こえそうなほど
引き攣った顔を向ける父は
今にも怒号を飛ばそうとしている

「……いい加減にしろ！！
お前は私の言う通りにしてればいいんだ！」

広い部屋に父の声が響いた

そしてしん、とした空気が広がる

「……今の言葉、聞き捨てならないわね、」

その言葉に母が反応した

.

.

.