Forget-me-not 2 (ページ15)

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「…………お疲れ、」

ぽん、と頭に乗せられた兄の手にほっと息をつく

「A、今から私は会社に戻る
話は明日しよう」

『…………はい、』

父はそう言って去っていった

……何も聞きたくない

…………もう、疲れたの

" 自由になりたい "

久しぶりに浮かんだその言葉

「あ、西条さん！」

駆け寄ってくるのは父を見送りに行っていた伊藤さん

「……やっと、貴方の隣に立てる許可が下りましたよー

学生時代から……ずっと夢見てたんです」

にこにこと会社で見る顔に戻った伊藤さん

でも、そんなこと……もうどうでもいい

「…………必ず迎えに行く、そう言ったでしょう？
小学生の時に言ったの、覚えてません？」

そう話す伊藤さんにふと思い出す

" ぼく、おおきくなったらむかえにいくからね！ "

" そしたらぼくがAちゃんを自由にしてあげる！ "

…………そうか、あの時の……

『…………南澤社長の愛人の息子、』

あ、思い出してくれたんですか？！なんて嬉しそうに笑う伊藤さん

「貴方に近付けるように頑張ったんです」

褒めて褒めて、と言いたげな表情で
こちらをにこにこして見ている伊藤さんに
小さくため息を零す

『…………ごめんなさい、疲れているので
昔話をしたいのであれば……また後日にしていただけます？』

自分でも驚くほど低い声にひやりとした空気が漂う

「…………分かりました、また改めます」

空気を読んでか、すぐに引いてくれる伊藤さん

『……柴田、』

「…………はい、」

『…………あなた、知ってたのね？』

「…………申し訳ございません……」

『…………そう、』

柴田が悪いわけじゃない

" 西条家 "の執事として、トップの指示に従っただけだ

『帰ります』

「……お車回してあります」

その後は一切無言で、

ひたすら、込み上げる雫を
零さないようにするだけだった

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