両思い。【磯貝悠馬】Part2 (ページ6)

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両思い75日目ページ6

「いくら物を充実させても、お前達が子供たちの心に寄り添えていなかったのなら、この二週間分を働いたとは認めんぞ」

すっかり最初の厳しい顔に表情を変えた園長先生に固唾を飲み込む私達。流れた沈黙を破ったのは

「おかえりー！」

「「せんせー！！」

私の横にいた3人組のまるでタックルのような園長先生への突撃。急に駆け寄ってきた3人に少しバランスを崩して慌てた声を上げた。

「おお、お前達か。随分待たせてしまったなぁ」

「園長先生、これどーぞ！！」

「これも！」

「菜瑠のも！」

飛びっきりの笑顔で見上げる3人の手には、ちょっとだけ不器用に折られた自由帳の1ページ。なんじゃ、と不思議そうに園長先生が手に取ったそれを開くと

"いつもありがとうちづる"

"げんきでいてねひかる"

"だいすきなる"

それぞれ、3人の大好きな色で大好きな園長先生に向けられたメッセージ。それを見た瞬間園長先生の目が驚いたように開かれた。

「Aねぇに教えてもらったんだよ！」

えへん、なんて威張った風に満足気に胸を張る輝くん。

最初は上の二人は自分の名前と少しの字しか書けなくて、菜瑠ちゃんは文字自体書くことが出来なかった。だけど私が書いた字を必死に真似して書いた3人。横に添えられた園長先生の似顔絵といい、最高のプレゼントでは無いだろうか。

「ありがとう、ありがとう」

本当に嬉しそうにしみじみと、3人の頭を撫でながら笑う園長先生。そんなやり取りを微笑ましく見守っていると

「おーい、渚ー！！」

ピンク色の髪をふわふわと揺らして、手に1枚の紙を握りしめて満面の笑みで走ってくる女の子。渚君の目の前に着くなり自慢げにピースしながら紙を掲げた。鬼屋敷さくら、という名前の横に刻まれた数字は95/100。

「なんとクラス2番！！」

「おおー！すごい、頑張ったね」

「渚の言う通りやったよ。算数テストの時間だけ不意打ちで出席して、解き終わったら速攻で帰った！」

「いじめっ子も、テストの最中じゃ手の出しようがなかったでしょ」

「うん！先生以外、誰にも行くこと言ってなかったしね」

「自分の1番得意な攻撃を、相手の体制が整う前に叩き込む。これが僕らＥ組の戦い方だよ。

さくらちゃん、こんな風に一撃離脱を繰り返しながら、学校で戦える武器を増やしていこう」