両思い。【磯貝悠馬】Part2 (ページ31)

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両思い102日目ページ31

烏間side

「あんたには理解できないでしょうけど、彼は理解してくれた。僕とお前は同じだって」

それはまるで訴えかけるような口ぶり。銃口は変わらずイリーナに向けたまま、その話に耳を傾けていた。

「そうだね。昔話をしてあげたっけ。テロが耐えない貧困のスラムに生まれ、命なんてすぐ消えるあやふやな世界。信用できるのは金と己のスキルと、殺せば人は死ぬということだけ。だから、イリーナなら僕の気持ちをわかってくれる」

「例え僕が君を、捨て石に使おうとね」

突如低くなった声色に嫌な気配がした。自分の身を守るように蹲り、防弾チョッキで体を隠す。その俺の行動が早いか同等か、凄まじい騒音とともに降ってきたのは天井のコンクリートの瓦礫。

一瞬で辺りはめちゃくちゃに瓦礫が突き刺さり悲惨な状態へ変わっていった。

「……っ」

自身の体の上に乗った比較的小さな瓦礫を蹴飛ばすように起き上がる。俺の生存を知った死神は面白そうに笑った。

「生きているとは、流石だな。でも君は追って来れない。彼女は君達を惑わす為だけに雇った」

やつの言葉に、さっきまであいつがいた場所を振り返る。大きな瓦礫の下敷きとなり、静かに目をつぶり倒れ込む見慣れた金髪がそこにはいた。上下している胸からまだ生きていることは確認できる。だがもう体に力を込めることも出来ないほどに弱っているようだ。

「さて、最後の仕上げに入るとしよう」

死神はまた廃墟の奥に向かって歩き出す。俺は一も二もなくそれを追いかけた。

さっきアイツは、「死ぬことは覚悟の上」だと言った。こんな事になったのも、死神の策略にハマったのも、全てあの馬鹿の自己責任。今の俺にはアイツを助けることより優先すべきことがある。

死神へと続く道に刺さった瓦礫を力ずくで退かした、その時。ザザザ、と今まで意味を生していなかったトランシーバーが機能し始めた。

『烏間先生！！烏間先生！！ようやく繋がりました……。無事ですか！？先程の爆発音は！？」

聞こえてきたのはあのタコの焦った声。だが今はゆっくり話し込んでいる暇はない。作業する手は止めないままに俺は答えた。

「俺はいいが、イリーナは瓦礫の下敷きだ。だが構っている暇はない。死神を追う」

「ダメ……っ！！！」

しかし、淡々と話す俺の声は音割れするぐらいに大きな声で遮られる。この声は……恐らく、倉橋さんだろうか。