両思い。【磯貝悠馬】 (ページ8)

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番外編Part1～出会いと恋心～ページ8

それからというもの、その2人組はこのカフェに頻繁に来るようになった。
蒼髪の子は、毎回決まってケーキを頼む。色んな種類のを食べていたけれど、その8割くらいはチーズケーキだった。どうやら相当気に入ってくれたみたいだ。

もう一人の子は、本当に様々。スイーツだったり、パスタだったり、飲み物だけだったり。
彼女たちは完全に常連さんになっていた。

その日、ホールが珍しく1人だった。学校の授業時間が似ており、よく一緒に入る笹井さんも今日は彼氏とデートだと以前に楽しげに語っていた。

とはいえ、店自体もそんな忙しくなく、1人でも十分に回せるくらいゆったりとした時間が流れている。
時々店長が仕込みをする美味しそうな匂いが鼻を掠めてお腹がなりそうになった。

＿＿＿ｶﾗﾝ､

音につられて、ドアに目を向ける。入ってきたのは彼女達だった。

「いらっしゃいませ。2名様でよろしいでしょうか？」

「はい」

「こちらのお席へどうぞ」

店内も空いているし、何よりこのお店を贔屓にしてくれているお客様。日頃の感謝の意味も込めて、あまり2人客には通さない広めの席へと案内した。

同じ学校の人を接客する為、少し緊張と不安はあったけれどどうやらそれは杞憂だったよう。彼女達は俺に気を止めることもなかった。

「おしぼりとお水、失礼致します」

お水を出して調理場に戻ると、店長が大丈夫？と心配げに尋ねてきた。きっと彼女達が同じ学校なのがわかっているために気にしてくれたんだろう。どこまでも優しい店長に心が暖かくなりながら、大丈夫です、と柔らかく答える。

静かな店内には、彼女達の話し声がよく響いていた。

「今日はどのケーキにしようかな」

「A、他のメニューもここオススメだよ」

「ほんと？今度挑戦しよ…でも今日はケーキの気分！」

「ふふ、やっぱりか。あたしはハニートーストにしよ」

「私はチーズケーキかな」

「またチーズ？」

「秋も食べてみなって！本っ当に美味しいんだよ！食べた時感動したもん…でもね、なんか1番最初に食べたのが1番好きなんだ。」

「なにそれ。毎回同じ味でしょ？」

「うーん、いっつも凄い美味しいんだけど…でもなんか、最初のが好きだったんだ」

その会話に、思わず自分の口角が上がるのがわかった。あの時、たまたま出した俺の作ったチーズケーキが、こんなにも人を喜ばせることが出来るんだって。

綻んだ顔がバレないように隠しながら、俺は注文を取りに行った。