両思い。【磯貝悠馬】 (ページ41)

今日:2 hit、昨日:17 hit、合計:39,169 hit

両思い62日目ページ41

「浅野君は、1人で戦況を決定づける強いリーダー。彼が指揮を執る限り、A組は負けない。磯貝君はそういうリーダーにはなれないでしょう。何故なら、君は1人で決めなくてもいいのだから」

殺せんせーの言葉に、大きく頷いた。

落とされた地面の上で、何かを待ち構えるように座る磯貝君。その背中を踏み台に

「なにっ？！」

『あぁっとE組！更に増員！』

最初の突撃留学生を抑えていたはずの千葉君や菅谷くんもA組陣地へと飛び込む。あいつら守備部隊だろ？！と驚きの声が客席から聞こえ、そちらを向けば

「えぇ？！E組の守備は2人だけ？！」

「2人でどうやって抑えてんだ？！」

ガタイのいい男を含む4人を、寺坂君と竹林君がたったの2人で抑え込んでいる。

「てこの原理です」

「あぁ…てこ…なのか？」

妙に自信満々に言い切る竹林君に、何だか疑問が残りながらも納得の声が上がった。何だか下の4人に話しかける竹林君に苛立ったのか、1人が浅野君に指示を求めるもA組はそれどころではない。

客席に居たA組男子も戻ってきて、まさに乱闘状態だった。

『A組も防御の体制が整ってきた！ここさえ耐え切れればE組に打つ手はもうないはず！』

荒木君が興奮気味に放送を続ける。そんなことはお構い無しに、磯貝君は最後の作戦を繰り返した。

「今だ！来い、糸成！！」

「あぁ」

「ヌルフフフフ、秘密兵器は最後まで取っておくものですよ」

勢い良く走り出した糸成君が、磯貝君の手を踏み台にさらに高くへと飛び上がる。磯貝君の押し上げる力も加わり、そのまま棒の頂点を物凄いパワーで蹴りつけた。

ゆらりと大きく斜める棒。最後の止めだという風に糸成が頂点にぶら下がれば、下から押すE組男子の力と合わさって、大きな音を立てて棒が地面へと倒れ落ちた。

A組男子も、客席も、E組客席も。呆然とした様にその光景を見つめる。

「…E組が…勝ったぞー！！」

磯貝君の心底嬉しそうな、やりきったその声に、

「「「「やったぁーーー！！！」」」」

E組全員の声が重なった。

「Aちゃんっ、やったね！男子達勝ったよ！」

「うん、うん！！凄いよ、本当に凄かった！！」

スーパー連写モードに入る殺せんせーの横で、私達もうるさいくらいにはしゃぎまくる。
満面の笑みで男子と抱き合う磯貝君を見て、私も思わずカエデちゃんに抱きついた。

彼の顔は、いつもよりも何倍も汚れてて汗に濡れているはず。……それでもあんなにカッコいいなんて、ずるいなぁ。