両思い。【磯貝悠馬】 (ページ35)

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両思い56日目ページ35

そしてその殺せんせーの言葉は、全くもってその通りになった。

二人三脚では、

「セクハラ！！」

「しょうがねぇだろ！近いんだから！」

なんで喧嘩をしながらも、前原君とひなたちゃんが断トツでゴール。次に行われた障害物競走では

「おい、あのチビ網抜けめっちゃ早ぇ！」

「体に抵抗がないからだ！」

カエデちゃんが網抜けでの脅威の素早さを見せつけ、1位ゴール。どっからか聞こえた失礼な言葉は彼女が聞いてたらきっと怒るんだろう。

そして私の出場する借り物競争。ドキドキしながら白いメモを開けば

『カツラ』

の文字。一瞬はぁ？！なんて怒りが出そうになったけど、すぐさまある場所へと走り出した。

「殺せんせー！！いつも変装の時カツラ被ってるでしょ！！貸して！！」

「にゅ、にゅやぁぁ？！せ、先生今日は持ってないんです…！！」

「なんで今日に限って…！使えない…！」

「ほら瀬戸、これ持ってけ！！」

肝心な時に使えない超生物に文句を吐けば、菅谷くんがポイッと茶色のカツラを投げてくれる。どうやら修学旅行の鼻の時みたくより目立たないものを作ってたみたいだ。

「ありがとう菅谷くん！！殺せんせーより頼りになる！！」

お礼もそこそこに、カツラを持ってまた走り出す。後ろから殺せんせーの泣き声が聞こえてきたけど、そんなのは今は無視だ。

そして結果は惜しくも2位。あと僅差の所で追いつけなかったけど、まあまあ良い結果ではあるのではないだろうか。

少し乱れた息を直して、客席へと戻る。菅谷君にもう一度お礼を伝えて椅子にどかっと座れば、カエデちゃんがお疲れ、と水筒を差し出してくれた。

流石に残暑の残るこの季節だ、喉はカラカラ。有難く受け取ってグビグビと飲み干す。ふと、役員の仕事から戻ってきた磯貝君が浮かない顔でノートを見つめる姿が目に入る。

思い悩むように佇むその姿が心配で、向かおうとすれば、いち早く殺せんせーが彼の隣へと歩き出した。

「各自の個性が武器へと変わる。棒倒しでどうそれが活かされるか、それは君次第ですよ、磯貝君。…おや、どうしました？」

送られた言葉は、先生なりのエールであろう。いつもならきっとあの頼もしい笑顔で返事をする彼だけど、今日だけはその表情は不安げなまま変わらない。そんな様子を見て、殺せんせーは優しく問いかけた。