両思い48日目 ページ26
良い空気に教室が包まれる中、さて、と殺せんせーが日誌を教卓に置き話を変えた。
「今日はコードネームで呼ぶ日でしたねぇ。先生のコードネームも紹介するので、この名で呼んでください。
懇親のキメ顔で言い放つ殺せんせーに、さっきまでの空気が消えたみたいに静まり返る教室。そして
「一人だけなにスカした名前付けてんだ！！」
「しかも何よそのドヤ顔！」
「にゅ、にゅやぁぁぁ！いいじゃないですか1日くらい！！」
「言い訳ないだろ！」
クラス中からの射撃総攻撃と、ブーイングの嵐。抵抗する先生の声も虚しく、結局この後
バカなるエ ロのチキンのタコ
と一日呼ばれていた。
＿＿＿＿
＿＿＿
「今日はおかしかったね、コードネームで授業なんて」
放課後、話題に出るのはやっぱりコードネームの事だった。渚君の言葉に、私は疲れたよ…なんて苦笑いで返事をする。
「瀬戸はピッタリだろ？」
「野球バカの方がしっくりくるでしょ」
からかうように笑う杉野君に小さな反撃を繰り出す。そんな私達を渚君が困ったように宥めていた。
「はは、ひでえよなぁ。な、コロコロ上がり」
「そもそも意味が分からない。何だ、コロコロ上がりって」
「そうよそうよ！全く誰よ、私に永遠の０なんて書いて投票したの！！」
呆れたように言う糸成君の横で、カエデちゃんはプンプンと頬を膨らまして怒っている。と言うか今日一日中彼女はコードネームで呼ばれる度に怒っていた気がするけど。
びくりとこちらを確認してカエデちゃんにバレないように教室から逃げてったあたり村松君が犯人かな。
自分のは誰が書いたんだろうなー、なんてクラスを見回していると、それじゃ、と短い挨拶を零して糸成君が立ち上がった。
「おい、今日も不味いラーメンで勘弁してやる。行くぞ」
ドアの前で待っていた寺坂君、吉田君、村松君の3人に声をかけ、教室からゾロゾロと出ていく。引き連れるようにして歩くその後ろ姿に、自分の席に座っていたカルマがクスリと笑った。
「すっかり寺坂組なんだね」
「うん、そうだね」
二学期に入っても、色んな努力を沢山重ねて充実した日々を過ごしていたE組。だけど、次の試練は直ぐに待ち受けている。
人の上に立つ者に必要とされる技量と才能。それを持ち合わせているのは一体誰なのか。
E組の反撃の狼煙が、また挙げられようとしていた。
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作者名：ангел | 作成日時：2021年5月2日 20時
