両思い43日目 ページ21
※本編戻ります！
「へぇー！イトナくんって、糸成って書くんだね」
数学の授業を終え、次の授業との隙間時間。教室の後方からカエデちゃんの驚く声が聞こえてきた。
「なになに？何の話？」
「糸成くんの名前。片仮名だと思ってたよ」
「キラキラネームだよね」
「ちょっ、いい名前じゃない。かっこいいよ」
ひなのちゃんも混じえて口々に彼の名前について話を広げる私達に、メグちゃんが苦笑する。そんな私達を見て、糸成君はキョトンとした顔で口を開いた。
「変わった名前なら、このクラスに何人もいるだろ。…例えば」
そう言った彼の視線の先にいたのは
「はぁ〜……」
なんだか浮かない顔でため息をつく木村君。
そういえば、とメグちゃんが思いだしたようにぽんと手を叩いた。
＿＿＿＿＿
＿＿＿
「えぇ、
驚きながらもカエデちゃんが関心したように声を漏らす。その驚き方が以前の私と全く一緒で笑いがこぼれた。
「皆武士の情けで
「最初入学式で聞いた時はびっくりしたよなぁ」
懐かしむように話す菅谷君に同意するように、皆がウンウンと首を縦に降った。カエデちゃんはこの春に転校してきたから、木村君の名前について知る機会がなかったんだろう。
「卒業式でまた公開処刑されると思うと嫌ったらねぇよ…」
詳しく話を聞けば、彼の両親は警察官らしく、正義感で舞い上がっちゃって付けられた名前だそう。正義感が強すぎるのも考えものなのかな…。
「親は親で、つけた名前に文句を言うとは何事だー！って叩いてくるしよ、子供が学校でどんだけからかわれるか、考えたこともねぇんだろうなぁ…」
はぁあ、と息を吐きながら机に項垂れる木村君に、自分の席で本を読んでいた狭間さんがやってきた。
「そんなもんよ、親なんて」
バシン、と音を立てて木村君の机に手をつくと
「私なんてこの顔で綺羅々よ、綺羅々。綺羅々っぽく見えるかしら…？」
ずいっと顔を近づけて不気味な顔で笑いながら言う狭間さんに、完全に木村君はタジタジだ。
「うちの母親はメルヘン脳のくせに、気に入らない事があったらすぐヒステリックに喚き散らす。そんなストレスかかる家で育って、名前通りに可愛らしく育つ訳ないのにね」
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作者名：ангел | 作成日時：2021年5月2日 20時
