両思い。【磯貝悠馬】 (ページ19)

今日:8 hit、昨日:4 hit、合計:39,179 hit

番外編Part2 ～宣戦布告～ページ19

磯貝side

「隣いい？」

沖縄旅行の帰り道、最寄りの椚ヶ丘へと向かう電車の中、不意に話しかけられた。
どす、と少し乱暴気味に隣の座席に腰かけたのは赤羽業。渚は向こうで杉野と話しているのに、何とも珍しい。

「あぁ。珍しいな、カルマが渚じゃなくて俺らのとこに来るなんて」

「まあね。少し話したいことあったから」

俺のほうへ視線を向けず、いつものようにイチゴ煮オレを啜りながら淡々と喋る様子に、違和感を感じた。

「俺さぁ、Aちゃんの事好きなんだよね」

その発言に、反対隣に座っていた前原が驚きの声を上げた。おまえ、いつから？！なんて騒ぐ親友を他所に、俺はどこか腑に落ちたように納得する。同じ女子を好きになったからこそだろうか、何となくカルマの気持ちに勘づいている自分がいた。

「何となくそうだと思ってたよ。カルマを見てればわかるさ」

「俺を、じゃなくてAちゃんを、でしょ？ずっと見てたからそこに絡む俺の思惑に気づいたくせに」

「…そうかもしれないな」

そんなに目で追っていただろうか、なんて少し恥ずかしくなった。思わず誤魔化すように笑ってしまう。

しかしところで、カルマは何を話しに来たのだろうか。言った通りにカルマの気持ちに気づいていたことは、勘のいい男だからカルマ自身だって知っているはず。それだけをわざわざ言いに来たようには思えない。

「それで、話ってなんだ？」

「………。

俺さ、Aちゃんに告白したんだよね」

ドキリ、と心臓が嫌な音をたてた。え、と目線を隣の男へ向ければ、真っ直ぐに前を見て、だけど真剣な目をしたカルマがいる。

「そんな驚く？俺の気持ちにも気づいてたんでしょ、磯貝は」

「まさか告白までしてたと思わなくて。…流石、度胸あるな」

「1度狙ったら行動早いからさ、俺」

軽く笑いながら、また一口煮オレを啜る。平常心を装って会話を続けるも、俺の心の中は不安でいっぱいだった。

瀬戸の返事はどうだったんだ？
笑ってるし、まさか上手くいったのか？
でも、あの岩場で俺も話したし…いや、でも明確に伝えた訳じゃないし。
好きじゃないって言ってたけど、気が変わったとか…？

疑問が沢山溢れ出てきて、何も言えず口を噤んだ。ガタンゴトン電車の音と周りで話す友人達の声が大きく聞こえて、隣からは前原が心配そうに俺の名を呼ぶのが聞こえる。

暫く沈黙が流れ数秒後、またカルマが口を開いた。