新人アイドルの恋事情 3th (ページ9)

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「リク、幸せそうだな。……で、お前さんはなんでそんな浮かない顔なんだ？」

「……え？」

立ち去った2人を見送っていたら、大和さんにかけられた言葉。心当たりのない指摘に戸惑いを口にすれば、彼は面倒みの良さそうな笑みを浮かべる。

「リクの話聞いてから、表情曇ってったろ。お兄さんを見くびらないでくれない？」

お前さんもAちゃんのこと気になってるんだろ？

優しく告げられた言葉、まさに図星で。何も答えられず口篭る僕に、大和さんは再び口を開く。

「年上だからって、好きになった日が浅いからって遠慮することねぇんじゃねえか。……まぁ、メンバー内での仲違いは辞めて欲しい所だけど」

この人は、本当に。適当なように見えて、曖昧なように見えて、周りの事を本当によく見てる。

だって今も、僕の情けない悩みを一瞬で見抜いて溶かしてしまったのだから。

「……笑顔が、素敵だと思ったんです。花が咲くって言葉が似合う笑顔だって、そう思いました。……その笑顔を、絶やさぬよう守りたいって……」

陸君の手前、吐き出せなかった思い。全てを吐露する僕に、大和さんは情熱的な告白だな、と肩を竦めて笑った。

「幸せ者だよ、Aちゃんは。こんなに思ってくれる人がいて。

俺はどっちの肩を持つわけにもいかねえけど、……まぁ、頑張れよ」

三月さんが陸君にしたように、僕の肩を優しく叩く。僕の心を少しでも和らげるため、してくれたんだろうか。隠れた気遣いに笑みが零れる。

「にしてもあれだな、あいつ人を惹きつけすぎだろ」

「それだけAちゃんには魅力があるんだと思います」

「おま、バレた瞬間素直になんなよな……。リクにソウかぁ……いい男に好かれちまったもんで」

「大和さんにそう言って貰えると少し自信が出そうです」

「そりゃ良かった」

プリンを食べ終わったのか、Aちゃんと環達が一際賑やかに騒ぎだす。机の上にはプリンの蓋と散らばった空になったカップ。また環君は……食べるだけ食べてそのままで。

「ちょっと行ってきます。大和さん、話を聞いてくださってありがとうございました」

注意して片付けなきゃ、そう思って大和さんにお礼を告げてその場を去る。本当はこんな恋愛話をする自分が気恥ずかしくなったから、なんて理由もあるけどそれは秘密。

……でももしかしたら、大和さんならそれすらも分かってるかもしれないな。

*作者の一言

記念すべき100話目。にしては話進まない。困ったぞ。