新人アイドルの恋事情 3th (ページ45)

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Onehundred-thirty five ページ45

「……」

再びテレビ局へと移動する車の中。いつもなら他愛のない話で盛り上がるものの、今は静寂に包まれていた。

結局IDOLiSH7の皆の空気は改善することは無かった。素直に応援する、と言い出せない他のメンバーに、不満げに顔を顰めて出て行ってしまった環君。壮五さんも少し1人にさせて欲しいと続いてしまい、残ったメンバーも浮かない表情。

大和さんがこんな状態でレッスンしても無駄だ、と解散を言い渡した。「Aちゃんもなんか巻き込んでごめんな」なんて笑ってくれたけど、私はそれに上手く答えることは出来なかった。

「皆の喧嘩なんて初めて見た」

「出会った初日から仲が良かったもんね」

「……仲間、なんですよね。皆は」

「……。うん。喧嘩しても、口を聞かなくても、あの7人が仲間だってことは変わらないだろう」

「喧嘩しても、ね」

私の不安を払拭するように、芯の通った声で話す流川さん。その言葉を復唱して、黙り込む。腑に落ちたようでそうでない。やっぱり変な気分だった。

「あ、電話だ。ちょっと失礼するよ」

不意に軽快な着信音が車内に響き渡る。私の返事を聞くが早いか、すぐ横のコンビニの駐車場へと車を停めた。

「もしもし、はい、小鳥遊事務所の流川です。はい、はい……」

電話越しにぺこぺこお辞儀をする流川さんをぼうっと後部座席から見つめる。後日家族に同じことを指摘されるとは露知らず、相手に見えないのに面白いなーなんて呑気に笑ってた私だけど

「え、本当ですか！？はい、はい……ありがとうございます！」

急にトーンの高くなった声。なんだろう、と不思議に思っていれば、失礼致します、と上機嫌で通話を終えた流川さんがにっこにこの笑顔で振り向いた。

「A！！朗報だよ！！」

「朗報？」

「ミュージックフェスタ、出演依頼が来たよ」

「ミュージックフェスタ……って、あの生放送の特大番組だよね？」

「そうそう！もちろん出演でいいよね！」

「え、あ、はい」

唐突な大仕事に混乱してる私を置いてけぼりに、流川さんは「いやぁ〜やったなぁ、Aの力全国に見せつけないとね〜」なんて楽しそうに笑っている。

全国生放送。常に高視聴率の番組。インディーズから大御所まで集まる歌番組。

「……頑張らなきゃ。アイドル界の新星、の姿を証明しなくちゃ」

やってやるぞ！
そんな有名番組に出演させていただける喜びを噛み締めながら、心で決意を固めた。