新人アイドルの恋事情 3th (ページ40)

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「そういえばね、ちょっと私もびっくりしたんだけど！ステージの上からだと、皆さんの顔意外とすっごく見えるんだよ〜！おーい、こんにちはー！」

次の曲までの準備の時間、MCをして繋いでいく。話はそこまで得意じゃないから、どんな風にしたら盛り上がるのか、探り探り。

会場の奥の方の席へと向かって大きく手を振ってみれば、きゃー！なんて若い女の子達の明るい声が返ってくる。何て初々しい反応か。可愛すぎる。

「返事くれた！嬉しい！……あ、もちろん全員のことじいっと見てるからね！さっき歌ってる時に今日は全員にファンサしてやるーって心に決めたから！」

そう言いながらも、今度は反対側に向かって手をフリフリ。そんな私の動作一つ一つに心底嬉しそうに反応してくれるから、どうしようもなくファンの皆さんが愛しく思えてしまう。

「え、投げキッスして？……えへへ、なんかちょっと恥ずかしいな」

私の言葉に答えてくれたのか聞こえてきたファンサの声。少し照れ臭さは残るとも、会場中の全員に届くように、なんて大袈裟にしてみれば、可愛いー！！と嬉しい言葉が。

……ファンの皆が答えてくれるの嬉しいけど、何だかすごく恥ずかしい。
改めてアイドルってすごい仕事だな、なんて検討違いな所でしみじみとアイドルとしての振る舞いを実感していた。

「そうだ！そう言えば私の出演してたドラマ、見てくれた？」

問いかける私に、もちろん！、見てる！と様々な返事が返ってくる。
何回もミスしちゃったんだよね、とかシーン勘違いして違うセリフ言っちゃったんだよね、なんてちょっとした舞台裏トークをすれば、たちまち会場は笑いに包まれた。

そのままトークを続けながら、ふと横目で舞台袖を確認。
流川さんからのOKサインを確認して上手く話を切りあげる。

「よーっし、じゃぁ続きのお話はこの曲を歌ってから！まだまだ楽しんでいくよー！」

再び盛り上がる歓声と拍手に包まれ、イントロからガツンとポップ調が特徴な曲が流れ出す。

歌い終わっても、またすぐに続くてもう一曲。輝くように煌めくファンの皆の笑顔と、それに答えるように会場を彩る私の歌声とダンス。

……アイドル、すっごく楽しい。
ファンの皆と盛り上がれることが、こんなにも心躍ることだったなんて知らなかった。

ライブが進むにつれ、どんどんと増していく会場全体の熱に、いつしか時間を忘れるように夢中になっていて。

気がつけば残りはトリの新曲を残すのみとなっていた。