新人アイドルの恋事情 3th (ページ27)

今日:22 hit、昨日:38 hit、合計:54,273 hit

Onehundred-eighteen ページ27

「う、売り切れてます……」

あんなに自信満々だったのに、いざとなったらその驚きは別次元。ポカン、と呆然としながらそう言う流川さんに、え？とどこからか漏れた誰かの声。

「入れたと思ったら……完売表示で」

くるり、パソコンの画面を皆の方へと向ける。それを見つめる皆の表情は、まさに驚きに満ちていて。

「開始約15分で、完売……？」

万理さんが、信じられない、とでも言うような声を漏らす。私に目を移す皆が、嬉しくてたまらないような、私を見守るような、そんな視線に変わっていて。

「ほんとに……？ほんとに、完売なの？5000人も、私の歌を聞きに来てくれるの…………？」

「み、見間違いじゃないのか！？」

「10度見しました」

「10度見とは……」

じんわりと目に熱いものが込み上げてくるのがわかる。私の手を握ってくれていた陸君の手に、さらに力が籠った。

「本当だよ！！5000人の人がAの歌を聞きに、Aに会いに来てくれるんだよ！！」

「この状況から考えると、私達と同様アクセス集中で買えなかった人も沢山いるんでしょうね」

「すごいじゃねぇか、A！！おめでとう！！」

「OH！！本日はベリーハッピーデーですね！！」

無邪気に喜び、口々に私へとお祝いの言葉がかけられる。そんな皆の笑顔に、段々とこれが現実なんだと実感が湧いてきて。

「…………っ、う、ぁ、私…………嬉しい……嬉しい……っ！うわぁぁぁ……」

さっきの紡ちゃんを、さっきは微笑ましいなぁ、なんて見ていたけれど。そんな彼女が比じゃないくらい、口から漏れ出た泣き声と目から溢れる大粒の涙。

「……本当に、うるさい人ですね」

くすり、小さく笑った一織君が私の背中を撫でてくれる。まるで子供のように泣きじゃ来る私を、誰もが暖かく見守ってくれていて。

「皆……ありがとうっっ…………！！！」

涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔だけど、それでも心からのお礼を込めて、にっこりと微笑んだ私に。ちょっとだけ照れくさそうに、頬を染めて、皆も笑ってくれたんだ。

「よーっし、IDOLiSH7と双葉A！！これからも小鳥遊事務所の代表アイドルとして、頑張るぞー！！！」

「「「「「「「おーー！！！！」」」」」」」

零れてきた涙を振り払って、握った拳を空に向かって掲げながら、大きな声で叫ぶ。

それに応えて、事務所中に響いた更に大きな声。それぞれの目標を目の前に、全員の思いが1つになった瞬間だった。