Ninety-four ページ3
流川さんは空気を読んだのか本当なのか、スタッフさんの所へ行ってくる、と楽屋を出ていった。つまり今この部屋にはTRIGGERの3人と私だけ。お菓子を差し出して貰ったにもかかわらず、遠慮と緊張から手を出すことが中々できない。ただ固まって座るだけの私に
「俺達、差し入れ貰っても3人ともあまり食わなくてよ。いつも余っちまうんだ」
「Aちゃん、遠慮せず食べて!」
八乙女さんと十さんはニコニコと勧めてくる。
「……はいこれ。前食べたら美味しかったよ」
そして固まっていた私を見兼ねてだろうか、天君が箱の中から1つを取り出して手渡してきた。真ん中にいちごのジャムが飾られた可愛らしいクッキー。ピリリと個包装を開けて口に含めば、サックリとした口当たりにほのかな甘みと酸味。
美味しい、と声を漏らす私に前の2人もふっと顔を緩めた。
「現場でよく話すって言ってたけど、どんな風に仲良くなったんだ?」
「どんな?」
「天は普段あまり女の俳優さんやタレントさんと自分から関わらないんだ。だから気になって」
八乙女さんの質問に不思議に思った私に気づいたのか、十さんが補足を入れてくれる。ちなみに天君は答える気は無いのか静かに座ったままだ。
「えっと、ちょっと以前お会いしたことがあって、その流れで天君が話しかけてくださったんです」
嘘を答える訳にも行かないし、隠すことでもないかと思い素直に答える。目の前の2人は私の返答にさらに驚いたように目を瞬かせる。
「知り合いだったのか?」
「幼い頃にあったことがあって……一緒に遊んでたんです。…………天君、昔から歌が上手だったんですよ!」
昔を懐かしむように思い出しながら述べる。ふと、隣から視線を感じてちらりと見れば、彼はどこか訴えかけるような、それでいて厳しい目で私を見ていて。……きっと陸君の事だろうか。そう判断して彼の名前を出すことはやめた。
「そうだったのか!天、自分の話は全くしてくれないからなんか新鮮だなぁ。幼い頃の天の歌、聞いてみたかったよ」
「この生意気のガキん頃か……俺も見てみたかったな」
新しい話が聞けたからか、2人はなんだか楽しげだ。馬鹿なこと言わないで、と制止する天君に八乙女さんが今度小さい頃のアルバム持ってこいよ、なんて冗談交じりに言う。それに十さんも賛同し、いつの間にか楽屋はワイワイと盛り上がっていた。
クールな印象があったけど、本当の彼らは割とおちゃめなグループらしい。
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なのは(プロフ) - 更新楽しいです! (2022年3月1日 3時) (レス) id: 60efdb9fc8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ангел | 作成日時:2022年2月20日 22時