episode-46 ページ48
「あっ、リヒルデさんもこんにちは！……てかユウ、グリム、オレめっちゃ心配したんだぞ！？」
「僕達、今回も間に合わなかったな。でも、三人とも無事で本当に安心したぞ」
「ありがとう、エース、デュース。来てくれて嬉しい！」
エース君とデュース君はすぐに輪に入って、ユウ達と楽しそうに喋り始めた。……過ごしてきた時間に差があるのは当然だけど、どうしても寂しくなってしまう。
「二人も夕飯食べてって。もう遅いんだから」
「えっ！いいんスか？ご馳走様です！」
二人が目を輝かせて礼を言ってくれるので、ついその純朴さに口元が緩んでしまう。暖かい空間が、出来るだけ長く続いていけばいいと思った。
ーーーーー
side-クロウリー
『何？力を拒んだの？』
学園長室の卓上に置かれた、小さな鏡のような魔法道具から聞こえてくるのは、明らかに不機嫌そうな女性の声だ。音声だけの交信でも、鏡の向こうのしかめっ面が容易に想像出来てしまう。
「……はい。その上グリム君のファントムまで消滅させてしまったみたいで」
怖い怖いと怯えながらも、仕方なくぽつぽつと報告を紡いでいく。さすがはかの"美しき女王"……グレート・セブンの一人に数えられるだけあって、その威厳は凄まじい。
『何ですって？それじゃあ……！』
「はい。再度封印するのはとても困難に……」
魔力値が並外れたリヒルデさんのような人を封印する為には、本人がオーバーブロットを起こす必要がある。
しかしそう何度もホイホイと無計画にオーバーブロットなんて起こしてみたら、彼女の魂にも肉体にも大きな負担が掛かる。……場合によっては死に至ることもあるのだ。
だから最初のオーバーブロットで生じたファントムを予め保存しておいて、その都度リヒルデさんに近付けさせれば、殆どオーバーブロットと同じような状態になる。そうなったらファントムを引き剥がすのも楽だし、死の危険と隣り合わせになる必要もなくなる。
今回はそのファントムをグリム君に再利用してしまったのが失策だった。何も知らないリヒルデさんは、図らずも己の生命線を切ってしまった。
『そうなれば『力の発現』などと言っている場合では無くなるわね……あの子には果たすべき"使命"がある。その為にはもっと"生きて"もらわなくちゃ……』
「しかし、今までのやり方の代替がそう簡単に見つかるでしょうか……？」
『……一つ、あるわ』
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作者名：虹雪 | 作成日時：2024年2月8日 2時
