episode-43 ページ45
『そうだ、首筋と脳天を狙うんだ。じわじわと苦しめてから殺せ。殺せ。殺すんだ……この化け物を！』脳内で私が叫ぶ。
「ギャウッ！ギャウウゥゥゥゥッ……！！」
あと少し、あと少しだ。『この化け物がのたうち回って死ぬところが見れるんだ！……私の息子を殺した化け物！！』……………………違う。
「キュウ……グガッ……グルル……」
咄嗟に攻撃の手を止めてしまう。違う、これは違う。私はグリムを殺したいわけじゃない。『ヴィルはもう死んだ、殺された。戻ってこない。この惨めな母親の無念をどう晴らす……！』
「ギャウッ！！」
気付けば再び攻撃を放っていた。今ので真後ろに倒れ込んだグリムが、ひっくり返ったまま手足をジタバタさせて起き上がろうとする。『腹だ。弱点だ、狙え』。脳内の声に反駁する余裕もなく、満身創痍のグリムに手をかざす。
違う……誰だ。……私に魔法を"使わせている"のは誰だ！？
別の私が叫ぶ。それなのに、また攻撃を放ってしまった。ドンッ、と衝撃が広がる。辛うじて軌道をずらし、グリムの致命傷は防いだが。
死ねとは思うまい。しかし……グリムには生きて償ってもらわなければいけない。
「ほら、今よ！早くファントムとグリムを引き剥がしなさい！」
「………！？」
予期せぬ声に驚いて振り返ると、崩壊した瓦礫の粉塵の中から二つの人影が段々と姿を現す。私は思わず目を見開いた。
「……ヴィル、ルーク……生きていた……」
二人は幸いにも無事と見える。お互い服はボロボロだし、肌は煤で汚れている。しかし本人達にそれほどのダメージは無さそうだ。
……この子がいれば私は頑張れる。破壊の誘惑に勝って、グリムを止めて見せられる……そんな自信が湧いてきた。
「なにボーッとしてるの？！早くファントムを引き剥がすのよ！グリム、また起き上がっちゃうじゃない！急いで！」
ヴィルの必死の叫びで、意識が現実に戻された。そうだった。ファントムを引き剥がせば、オーバーブロットを起こしても生還出来る。……やってやる。この子の願いなら……。
「ファントムが無いんだ、シェーンハイト！」
私の静かな決意をかき消すかのように、マレウスが焦りの色を見せながら叫んだ。
先程私が攻撃魔法を撃っていた間、マレウスはグリムの周囲を動き回っていたが、ファントムを探していたらしい。
「魔力の気配を探っても見つからないんだ！」
｢そんな……｣
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作者名：虹雪 | 作成日時：2024年2月8日 2時
