episode-41 ページ43
さっきの光はクロウリーが放ったもので恐らく間違いない。……つまり、クロウリーはわざとヴィルをここに転移させた。危険と知っておいて……。
「ヴィル、早く逃げなさい」
「そうだよ。リヒルデの言う通りだ。ヴィル、今のうちに。まだ闇の鏡だって間に合うさ」
口々に逃げるよう促されて、流石に若干不服そうな顔をしていたが、ルークの気迫にも押されて決心が着いたらしい。「分かったわ」と一言、鏡の間に向かおうとした。が、
ガチャン……！！
「……？！」
ヴィルの右足とオンボロ寮の鉄柵が、何やら手錠のようなもので繋げてあったのだ。ヴィルが突然現れたということに気を取られていて、この場にいる皆も足元まで気が回っていなかった。
「なんで……こんな」
鉄柵はグリムが暴れた所為で酷くひしゃげていて、手錠からも仄かな魔力を感じる。外すのはかなり難航しそうだ。
パンッ、とヴィルの足元で光が弾ける。ルークかマレウスが手錠目掛けて魔法を放ったのだろう。しかし、どれだけ放っても手錠には傷一つ付いていない。流石はディア・クロウリーと言ったところか。
ヴィルも錠を引っ張ったり鉄柵に魔法を飛ばしたりしているが、いまいち効果は無さそうだ。
「待って！万一ヴィルの足に当たったらどうするの！？」
2人とも手錠を壊そうと躍起になって、かなり強力な魔法を放っている。生身の人間に当たったら一溜りもないだろう。マレウスもルークも同感だったらしい。私の一言で攻撃をやめた。
「じゃあどうしろって言うの？！」
当然だがヴィルも少しピリピリしている。飛ばされてきたばかりだが、ここが危険だと十分に理解しているのだろう。
「冷静に手錠の解除方法を探しましょう。大丈夫、グリムは今封じたところだから……」
「ガウッ！！……ガルルル……！！！」
私が言い終える前に、怒った獣の咆哮が耳を劈く。あまりに咄嗟の出来事に、血の気が引いてゆくのを感じた。
「？！……どうして？！」
すぐに振り返ると、そこには封じたはずのグリムがあちこちに炎を吐きながら唸っている。
「リヒルデ！どういう事だ？！」
「分からないわよ！今は魔法だって使っていないのに！」
「ガウウウ……！」
グリムは動けないヴィルのすぐ近くにいる。……落ち着け。少しでも判断が遅れたら、取り返しのつかないことになるかもしれない。
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作者名：虹雪 | 作成日時：2024年2月8日 2時
