episode-40 ページ42
リヒルデさんは、オーバーブロットを起こしたグリム君の魔力……己と類似した魔力の暴発に感応して、初めて彼女は封印から解かれる手筈だった。
予定通りなら、己が倒すための怪物の力に感応して復活したのだから、彼女は"あの力"を再び発動できるはずだった。しかし、封印を解くトリガーが母親としての未練になってしまったのだとしたら。
｢厄介ですねえ……仕方ありません。こんな手は使いたくなかったのですけれど……｣
side-リヒルデ
｢何か分かったか？｣
｢……いえ｣
マレウスとルークが二人がかりでグリムの魔法を封じた結界の綻びを治している横で私も、グリムの魔法が増幅し続けていることについて何か手掛かりはないかと探していた。
｢……よし、ハント。概ね完成した。暫くは耐えられるだろう｣
「……！！」
その時、視界の端……いや、私のユニーク魔法の空間内の鏡の一つを通して、遥か遠い空の上に見知った人影を見つけた。助力が増えるのはありがたい。そう思って、その男に合図を送ろうと手を振りあげた。
「クロウ……！！」
大空の上で高みの見物を決め込んでいた、その男の名前を呼び終える前に、強大な魔力を伴った光が、空中を貫いて地上落ちた。
｢っあ！何？！｣
私達の視界は、瞬時に白へと塗りつぶされた。
「……リヒルデ、無事かい！？」
「何が起こったんだ、グリムは？！」
「グリムは居るわよ！さっきのは学え……」
視界が戻ってすぐ、閃光の中であんなに叫んでいた皆が、まるで水を打ったかのようにぴたりと静まり返った。
「……ルーク！？……それにここは学園！？……アタシ、どうして……！」
「……ヴィル？」
光と入れ替わるように私達の目の前に現れたのは、先程闇の鏡で帰った筈のヴィル・シェーンハイトだった。全く状況を飲み込めない私達は、突如現れた予想外の存在をまじまじと見るしか無かった。
「ヴィル、どうして貴方がここにいるの？早く帰るように言ったわよね？」
「アタシだって分からないわよ、家にいたら急にここに飛ばされて……」
「転移魔法か」
ぽつりと呟いたマレウスに、全員の視線が向く。ルークもピンと来たらしい、……そう、さっきの光だ。
考えたくは無いが、状況を見る限り、さっきの光はクロウリーが放ったものなのだろう。……つまり、クロウリーはわざとヴィルをここに転移させた。危険と知っておいて……。
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作者名：虹雪 | 作成日時：2024年2月8日 2時
