episode-39 ページ41
あくまで魔法は、だ。体の方がとにかくダメージを受けた。回復魔法で何とか最低限は持ち直したが、それでもまだ危うい。しかし、やらなければならない事がある。私の体なんて、この際関係ない。
｢っリヒルデ、無茶だ。今のキミは体力が著しく消耗している、危険だ｣
｢ルーク、体力なら魔法でも何とかなるわ。それよりグリムよ。グリムの方がずっと危ない……｣
｢……なら、私もお供しよう。キミを守るよ｣
何故なのかは分からないが、ルークなら私の気持ちを分かってくれるはずだという期待があった。予想通りに、ルークは無理やり私を引き留めようとはしなかった。
｢なら、僕も……｣
｢ユウは……本音を言えばここに残って欲しいけど、グリムが心配なのもわかるわ。どこか安全な場所から、私達の戦闘を見ていなさい｣
格好よく指示を出したつもりだったが、ベッドの外へ出た途端に足は重くよろけてしまった。その後しばらくルークやユウに支えられて歩く姿は情けなかったに違いない。
side-クロウリー
オーバーブロットを起こしたグリム君を、彼女はまだ封じきれていないらしい。しかもドラコニア君まで出てきてしまった。不味い。ドラコニア君の身を危険に晒すだけでなく、彼女が力に目覚めない可能性も出てきてしまった。
｢未練が残っているんですかねえ｣
そもそもリヒルデさんの封印が弱り始めたのは、2月頃。……ちょうどシェーンハイト君がオーバーブロットを起こした頃だ。
本来の予定では彼女は闇の鏡に封印されたまま、あのユニーク魔法の鏡の空間を通じて、ユウ君を元の異世界へ案内することになっていた。
あの鏡の空間は、ストレス値を抑えても夥しい量のブロットを排出する。監督生君のような他人を空間内に取り込むだけでも、その排出量たるや考えるだけで恐ろしい。
リヒルデさんが生み出したブロットはグリム君の体内に瞬間移動し、尻尾や耳の炎で瞬時に焼却されるようになっている。それには原始魔法が用いられているため、解析や、まして解くことすら容易ではない。
S.T.Y.X.もこの真実に辿り着いた。グリム君が嘆きの島に連れていかれた時だ。けれどリヒルデさんの存在は流石に明らかにはなっていないだろう。
そして、グリム君がリヒルデさんから流れてきたブロットを処理しきれずオーバーブロット。その、己と類似した魔力の暴発に感応して、初めて彼女は封印から解かれる手筈だった、のに。
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作者名：虹雪 | 作成日時：2024年2月8日 2時
