episode-28 ページ30
……リヒルデさんはもしかしたらヴィル先輩を愛しているのかもしれない。思えばさっき、二人が初めて顔を合わせた時、僕は二人の間に電流のようなものが走り抜けるのを見たような気がした。
まるで『運命の出会い』のような、そんなロマンチックな言葉を信じてしまいそうな光景だった。
……いや、そんな淡いものではなく、もっと執念深い因果のようなものさえ感じてしまう。僕なんかが間に入って行けないような強いもので、二人は結ばれているみたいに思えた。
「いくらアタシ達生徒に責任がなくたって、これを見過ごして帰るなんて出来ない。……アタシだって魔力は並以上にある。助力ぐらいにはなれるつもりよ」
口を開いたヴィル先輩も、中々食い下がらない。
「いい加減になさい。……強いか弱いかということでは無いの。賢い貴方なら解るでしょう？ここは私に守らせてちょうだい、ヴィル・シェーンハイト」
急に厳しくなったリヒルデさんの言葉に、ヴィル先輩は一瞬だけ怯んだが、すぐに建て直した。流石はスーパーモデル、と言ったところか。
「……え、ええ、、ええ。分かったわよ。納得はしてないけどね。……取り敢えずアタシとルークも帰るわ。だけどその代わりアンタは必ず無事でいなさい。……でないと、こっちが寝覚め悪いんだから」
「っ、ええ。そのつもりよ、ヴィル。急いでね。じゃあ、私たちも」
ヴィル先輩の返事を聞いて満足したのか、リヒルデさんはさっさと鏡の間を後にしようとした。
僕も急いで後ろを追いかける。踵を返す直前の彼女の表情は心做しか喜びに満ちていたかのように感じる。ヴィル先輩に無事を祈られたからか。僕の心は再び乱れてしまった。
「リヒルデさんって、ヴィル先輩が好きなんですか？」
鏡の間を後にして再び彼女の背中を追いかけながら、必死でない風を装って切り出す。
「えっ！？どうして……？！」
普段の彼女なら見せないような妙な動揺っぷりに、僕の焦燥感は更に高まった。まるで典型的な、図星を突かれたような反応だ。
「何となくそんな気がして……」
「……ファンなの。いけない？」
「……いえ」
返事は飄々としているが、どこか余裕が無い。このまま追求しすぎると彼女のいたいけな感情を掻き乱してしまうのではないかと不安になって、渋々閉口したが、僕はまだ納得が行っていなかった。……そんなことを考えていた時だった。
「あっ、ユウ、あれ！」
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作者名：虹雪 | 作成日時：2024年2月8日 2時
