我が身にたどる女王【ツイステ】 (ページ28)

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そういえば今日はスプリングホリデー初日。皆実家に帰省するから、学園内には殆ど生徒が居ない。

「それで、グリムは……どこなんですか？！」

学園長の姿が目に入った途端、僕は堪えきれずに尋ねた。

「さっきはオンボロ寮の周辺に居たはずですが……」

「現在地をちゃんと確認していないの？！……まあいいわ。ユウ、オンボロ寮に急ぐわよ！」

「はい！」

おもむろに緊張感を取り戻した僕は、さっきの会話なんてすっかり忘れてリヒルデさんの後ろに付いて走って行こうとしていた。その時だった。鏡の間に忙しなく近付く足音に気付いた。

「学園長！もう鏡は使えるようになったの！？」

大きな声と共に駆け込んできたのはヴィル先輩……とルーク先輩と他のポムフィオーレ寮生が何人かだった。……明らかに皆焦っているのが分かる。

僕達が鏡の中にいる間も学園内にいた先輩達なら、グリムのことは既に知っていてもおかしくない。おおよそ寮生らと共に退避しに来たのだろう。鏡の間にさえ来れば、どこへでも逃げられるからだ。

「まだポムフィオーレに残っていた生徒を集めてきたから、この子達だけで、も……」

僕達の姿を見つけたヴィル先輩が言葉を止める。固まった、と言った方が近いかもしれない。その瞬間、ピリピリとした緊張が皆の間を走ったのを感じた。

「ねえ、その人誰なの？」

整った顔を鋭く顰顰(しか)めながら、ヴィル先輩はリヒルデさんを睨みつける。こんな差し迫った状況で、見慣れないリヒルデさんを不審に思ったのだろう。

「リヒルデ・エーレンベルクという人だ。ほら、少し前に話題になっていただろう？オンボロ寮に女性が居るって。毒の君毒の君(ロア・ドゥ・ポアゾン)にもいずれ会わせたかったんだよ、美しい人だろう？」

学園長の代わりにルーク先輩が答えた。……どういう事だ。何でルーク先輩がリヒルデさんのことを知っているんだ。

「ああ、あんなのただの噂だと思っていたわ。……それで、その貴女がここで何をしていたの？」

再びこちらに顔を向けたヴィル先輩の表情は、未だ敵意に満ちていた。

「……ユウがもと居た世界の場所を闇の鏡経由で探していたわ。きっと、鏡が使えなかったのはその所為だと思う」

ヴィル先輩の威圧に気圧されたのか、リヒルデさんがおずおずと答える。しかしそのリヒルデさんも負けじと、あくまで凛とした態度を貫く。どこか似た二人が睨み合う、不思議な光景だった。