episode-22 ページ24
「リヒルデさん……？」
どうしてここに、と尋ねるより前に学園長が話し出した。
「監督生くんにはまだ言っていませんでしたね。リヒルデさんは元々この学園に封印されていた魔法士なのですが、監督生くんの世界の手がかりが掴めるのでは無いかと思って封印を解いたのです。いやぁ〜私の見立てが的中してしまいました」
「封、印……？それになんで今になって急に僕の世界が…」
「リヒルデさんには元の世界の手掛かりを見つける為にも、監督生くんと共に、オンボロ寮に身を置いて貰ったのです」
「えっ……」
そんな、そんな事を言われたら、僕は今まで騙されていたみたいじゃないか。僕は、リヒルデさんが身寄りがないから……いや、そんな潔白な理由なんかじゃなかった。
「ユウ、今回は見るだけしか出来ないと思うけれど、君のいた世界に行ってみる？」
リヒルデさんが例えどんなに得体の知れない人だって、優しげな笑顔は初めて出会った日のものと少しも変わらない。僕は、リヒルデさんのそういうところに……。
「じゃあ、一目でいいから見たいです。……僕の故郷を」
「決まりましたね、ユウくん、リヒルデさん」
学園長とリヒルデさんが顔を見合せて頷き合う。そのまま彼女は闇の鏡の前へと歩み寄って行った。
「『宇宙の暗闇より出で、吹き荒ぶ風に乗り、我に万象を示せ。』」
「『始まりの魔鏡
リヒルデさんは闇の鏡の前で大きく腕を広げ、叫んだ。すぐさまいつも闇の鏡に映っている男の顔は消えて、鏡は底のない暗黒を映す。
「うわっ！」
暗闇しか映さない鏡から突如旋風が吹き荒れて、その場に居たリヒルデさん以外の皆を吹き飛ばそうとした。
「ユウ、おいで！」
風に煽られてひっくり返りそうになった僕の腕をリヒルデさんが繋ぎ止め、彼女の傍へと引き寄せられる。普段は家事をしているところしか見た事のない、か細く白い腕を、この時初めて力強いと感じた。
僕らはそのまま鏡の中に入って行った。
「こ、こんな場所が……闇の鏡に？」
「ええ、さっきの私のユニーク魔法でね。この空間と学園の闇の鏡とを繋いで貰ったのよ」
先頭を行くリヒルデさんが振り返らないまま言う。到着した空間では、右も左も沢山の鏡が並んでいるだけの代わり映えのない景色が続いていた。僕らがずっと歩いているこの中央の通路も終わりが見えない様だが、リヒルデさんは行き先がちゃんと分かるのだろうか。
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作者名：虹雪 | 作成日時：2024年2月8日 2時
