episode-17 ページ19
「……！！」
外の空気を吸おうと寮外に出ていた時だった。背後の枯れ木に何かの気配を感じた。
「……覗き見なんて趣味の悪い。出ていらっしゃいよ。私を見に来たんでしょう？」
背後を振り返り、枯れ木に向かって言い放つが、相手は微塵も動揺した様子を見せない。更に正確な位置を割り出そうと目を瞑った。瞼の裏に、魔力によって作られた新たな「視界」が投影された。
この同時刻に別の座標で起こっている出来事たちを覗いてみる。細かく座標を調整していくと、とある場所にユウ以外の人影を見つけた。南北に立っている枯れ木の、左から二番目の樹上。ちょうど寮の建物に隠れてこちらを観察できる場所だ。
「随分手馴れたものね。貴方の位置は分かっているわ。ここから狙って攻撃魔法を撃つこともできる……この意味が分かって？」
一回脅しで近くに撃ってみようか、とペンダントの魔法石を握ったが、案外あっさりと木から下りてくる音がしたので流石に止めた。さっきの位置特定で随分ブロットが蓄積してしまったので、できればこれ以上魔法は使いたくなかった。
「デゾレ、確かに無礼だったね。許しておくれ」
木から下りて来た男がこちらへ歩いてくる。上背は私よりも少し高い。男の余裕そうな態度に思わず身構えてしまう。
「……誰なの？」
「私はほんのしがない"愛の狩人
「マ、マドモアゼル……？私のこと？」
実年齢はそこそこいっているから、マドモアゼル
「ああ、貴女の名前を存じ上げないからね。……しかし先程の、木の上にいた私を攻撃魔法で射落とさんとするキミの鬼気迫る表情、実にボーテだった。狩人としての血が沸き立ったよ」
礼儀正しそうな物言いと上品そうな見た目から、一瞬警戒を解いてしまいそうになったが、さっきから言っていることがいまいちよく分からない。
……温和な人間を演じて、こちらが油断する隙を見計らっているのかもしれない。私はすぐまた魔法が使えるように、構えの姿勢を取った。
「おっと、まだ私が怖いみたいだね。何も、キミに乱暴狼藉を働くつもりなど微塵もないよ。ただ、聞きたいことがあるのさ」
「聞きたいこと……？」
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作者名：虹雪 | 作成日時：2024年2月8日 2時
