我が身にたどる女王【ツイステ】 (ページ18)

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「オンボロ寮に居るって噂の女性って、もしかしてこの人だったかい？」

写真の中で微笑む女性は、ラベンダー色の長い髪とアメジストのような澄んだ瞳、何よりその美しい顔貌は、紛れもなくリヒルデさんに見えた。洋館に置いてあるような洒落たガーデンチェアに腰掛けて、可憐な笑顔をカメラに向けている。

「えっ、ハント先輩お知り合いだったんですか？！」

「デュース！」

オレが吃驚していた傍で、勝手に間抜けな反応をしたデュースの脇腹を小突く。

「……鎌かけられてるとか考えないの？……」

小声で囁けば、デュースもやっとオレの言わんとすることが分かったようで、ハッとした表情のまま固まってしまった。デュースがあの時言った言葉は、ルーク先輩の質問に『はい』と答えているにも等しい。しらを切って否定し続ければ良かったのに。……それでルーク先輩から逃れられるかは分からないが。

「メルシー、私もまさかこんな所で出会えるとは思っていなかったから、驚いたのさ」

「あっ、待ってくださ……」

デュースの失言ですっかり満足そうな顔になったルーク先輩は、さっさとどこかへ行ってしまった。恐らくオンボロ寮だろう。

それにしても、デュースの言う通りルーク先輩がリヒルデさんの写真を持っていたという事実が繋がらない。とはいえそもそもオレはリヒルデさんが何者かすら知らないのだ。知り合いなのかもしれないし、……デュースも似ていると言っていたからには、もしかしたらヴィル先輩と血縁があるのかもしれない。

あの美しさに魅せられて、オレはリヒルデさんがまだ『何者か分からない』人だということを忘れてしまっていた。

side-リヒルデ

ユウの友達二人が帰って行くと、オンボロ寮はすっかり寂しくなった。まあ、グリムがいるので幾分かは賑やかだが。

私は少し夜風に当たりたかったから、寮の外に出ていた。流石にこんな夜分だ。門限を設定している寮なら、こんな時間に出歩くことは許していないだろう。如何せん、日中のことがあったためまだ安心はしきれなかったが。……あの若者達の空気に疲れてしまったのだ。とにかく外に出ていたかった。

とはいえ外は何も無い。オンボロ寮の名に相応しく、枯れ木や荒れ野に囲まれて、まるで本当に廃墟みたいだ。こういう場所で闇に紛れて、月を眺めるのもいい、そう思っていた時だった。

「……！！」

誰かいる。