episode-12 ページ14
「この前も窓からゲームの女の子の声聞こえてたぜー！全く、皆すっかり勘違いしてるぞー！」
しめた、と思ってすかさずオレは周りの野次馬共の反応を窺った。
「なんだーゲームかよー！つまんねーの！」
「おまえっ！期待して損したぞ！覚えてろ！」
口々とそんなことを言って、ほとんどの奴らは帰って行った。中には変な恨み言を吐くやつもいたが、こんな状況になった手前、何を言ったってどいつもこいつもみっともなくて笑えてくる。
ほぼ全ての野次馬がオンボロ寮から立ち去った時、オレ達の正面にあったドアが静かに開いた。
「……エース？」
ユウだった。
そのまま中に通されたオレ達は、昨日のことを謝った。とにかく今はこれを言いたくて仕方無かった。
「そう、バレてたんだね……」
「その、あの、こんな事になっておこがましいと思うけど……俺たちができることなら何だってするぞ」
「ううん、さっきも二人が皆を追っ払ってくれたから助かったよ。……二人にずっと秘密にしなきゃいけないのも苦しいし、話すよ」
ユウはまだ少し俯いている。皆に知られた事が相当ショックだったのだろうか。それともあの女の子のことを話すのは辛いのだろうか。と、そんなことをぼんやり考えていた時だった。
「風呂なんてまっぴらなんだゾー！ほらー！オレ様を捕まえてみろー！」
「こらっ！グリム！」
ずぶ濡れのグリムが談話室に走り込んできた。すかさずユウが叱りつけたが、グリムは止まらない。先程の言葉を聞く限り、今まで風呂に入れられて居たんだろう。ユウも今までの湿っぽい空気なんて忘れて、談話室がずぶ濡れになる前に捕まえようとしていた、その時……
「グリムっ！そっちへ行っちゃダメでしょう？！こらっ、戻ってきなさい！」
「……！！」
あの声だ。女の声……。３人の間に緊張が走った。間を置かず、グリムの後を追って足音が聞こえてきた。
「っ、リヒルデさん、待っ……」
「ユウ、グリムを捕まえ……あっ！」
談話室に走ってきた女が、オレ達を見つけて固まった。オレも驚いて、言おうとした事も忘れて女の顔をまじまじと見入ってしまった。とても美しい女性だった。
しかも女は今までグリムを風呂に入れていた為か、胴体にバスタオル1枚を巻き付けたような格好だった。ただでさえ息を飲んでしまうほどの美女が、そんな露出の高い姿で突っ立っていれば、オレみたいな男子校生は否応なく意識してしまう。
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作者名：虹雪 | 作成日時：2024年2月8日 2時
