episode-11 ページ13
ユウ達が囲まれているんだ。きっと昨日オレ達が先輩に言ってしまった所為で。
「てめえら何してんだ？！寄ってたかって卑怯だぞ！」
怒ったデュースが止めに入ろうとするが、あの態度じゃ逆効果だろう。とはいえ見過ごすことも出来ないので、ユウを取り囲む群衆に紛れる。
「おいっ！オンボロ寮に女連れ込んで、呑気なもんだなあ？！」
「どこまで進んだの？同じ部屋で寝てるんでしょ？」
噂に尾ひれが付きまくって、ユウに投げかけられるのは下卑た言葉や質問ばかりだ。救出しようとユウに近寄ろうとするが、なかなか頑固なクラスメイト共を押しのけることが出来ない。
結局、クルーウェル先生が来て初めて、事態は収まった。
「ごめんな、ユウ」
「……いいんだ。こういうこともあるよ」
ユウの顔は暗く曇っている。オレは罪悪感に押し潰されそうになった。ユウはあの女の子との平穏な暮らしを満喫していた筈なのに、それをオレの言い出しっぺで壊してしまった。
ーーーーー
「やっぱりな。こうなってるかと思った」
「来てよかったな。エース」
部活終わりにまたデュースを誘ってオンボロ寮に向かった。予想通り、オンボロ寮の周りには人だかりが出来ていた。例の『オンボロ寮の女』を一目見ようと、普段から女に飢えているような生徒達が今か今かと窓や戸に目を凝らしているのだ。帰宅時間から推測するに、ユウは多分この中にいるのだろう。
馬鹿馬鹿しい、と心中に溜息をつく。作戦決行だ。
「おーい、通せよ！ユウに用事があるんだ！」
デュースを先頭に、群衆に切り込んでゆく。柵も飛び越えて窓や戸に張り付く気色悪い生徒達を剥がしながら、正面のドアに辿り着く。呼び鈴を鳴らして、大声で叫ぶ。
「おいユウー！この前貸したゲームなんだけどー！デュースが遊びたいらしいからはよ返してくれねー！？」
「た、た、頼む、ユウ！」
相変わらず不器用な奴だと思った。演技が下手でぎこちない。こんな状況でも何度も噛みそうになってる。
「こいつ、デュースさー！美少女ゲーには目が無いんだよー！」
「え、エース、いくらなんでも声デカい……！」
事実にも無いことを叫ばれ、デュースは顔を真っ赤にして焦っていたが、小声で「さ、く、せ、ん」と言えば歯を食いしばって黙ってくれた。真面目な奴だ。
「この前も窓からゲームの女の子の声聞こえてたぜー！全く、こんなに皆に勘違いさせちゃってー！」
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作者名：虹雪 | 作成日時：2024年2月8日 2時
