episode-9 ページ11
オンボロ寮の中から女の声が聞こえた。しかしここは男子校。女性の声が聞こえるなど有り得ないのだ。半ば聞いてはいけないことを聞いたような……知っては行けないようなことを知ったような気がして、オレもデュースも目を丸くしたまま顔を見合せた。
「そんな、お料理美味しかったですよ！」
「まあ、悪くないんだゾ」
「そう？ありがとう。お料理はあんまり得意じゃないから」
お互い何も言えないまま、窓から聞こえてきた会話に耳を澄ませていた。……なるほど、この声の女の子にご飯を作らせてるから、今日のオレ達の誘いは断ったってことか……。
「そんなことないですよ！……それに、苦手なことなのにこんなに手の込んだものを作ってくれて嬉しいです！」
「口に合うようなら良かったわ。私も、そんな感想が聞けて嬉しい」
妙にイチャついている雰囲気の会話に、段々耳がむず痒くなってくる。デュースを横目に窺う。デュースも案の定オレと似たようなことを考えていそうだ。
「……エース、そろそろ撤退するか？……」
「……賛成……」
オレ達は興奮覚めやらぬまま、急ぎ足で寮に戻った。寮の門限もギリギリで、寮長に睨まれたが無事夕食にはありつけた。
久々にパーティー以外で寮の皆と食べる晩飯だったから、本来なら他の奴らと目一杯雑談でも繰り広げたかったが、オレとデュースは目配せしながら皆の輪から外れた。
二人だけで喋れるようにする為だ。……このことはまだ、他の皆には聞かれる訳にはいかない。大勢の寮生が集まっているデカいテーブルに背を向けて、オレ達は談話室の窓際の小さな机で食べることにした。ここなら幾分ひっそりとしている。
「……エース」
「ユウのことだろ？オレも今話題にしようとしてた」
「彼女なのかな……？」
「知らね。……でも絶対訳ありだな。ユウは例え彼女だろうと勝手に学園に入れて匿うような奴じゃねーし」
「それは俺も同意だ。だとしても、それじゃあ、学園長も公認の恋人ってことか？」
「……一旦『彼女』って線からは離れようぜ。でも確かに学園長が把握してないってのは考えられない……とも言えないか、あの人なら」
「……まさか、異世界から来た、とか？」
デュースが急に神妙な面持ちになったものだから、オレも思わず生唾を飲んだ。その時だった。
「やっほ〜、エーデュースちゃん達はそんな所で何話してるの〜？」
「「わぁっ！！」」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：虹雪 | 作成日時：2024年2月8日 2時
