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さて、今日の授業には練習試合も混ざっている。
神谷先生が何時もの様に戦う相手を組ませていく。
今回僕の順位は高めの18位、つまり相手は17位の__
「宜しくね、漆橋」
「此方こそ宜しく、香本」
二人とも場に上がる。
先生の試合開始の声が、今__響き渡った。
槍は使わない。もし不注意で刺してしまえば危険だし、棒は峰打ちでも痛いから。
……まあ、後方に置いてはあるのだが。長引いて本気に“なってしまった“ら使う。
相手は獲物である短刀を持ってはいるが矢張使わない気らしい。
先ずは距離を詰めて、お得意の足払いから入る。
「転けろッ!」
「そんなに、簡単にっ……やられないよ」
流石戦仲間、と言ったところか。
最初の手は読まれていたらしく、軽く後方に跳んで避けられてしまう。
こうなってしまうと面倒だ、俺の試合では大体の場合打ち合いになってしまう。
負傷している左手は使わない様にして、相手の左手を此方が右手で受け止め、此方の右足の蹴りを相手が左足で防ぎ。
野次馬の声はどんどん大きくなっていく。集中力が削がれる。
相手は右手で鳩尾を狙ってる、僕は__俺も、右手で鳩尾を狙う。
「おっ、動いたぞ!」
双方衝撃で後ろに下がる。
嗚呼、気持ち悪い気持ち悪い。吐いてしまいそうだ。
頭の中でぐるぐる思考が回って、回って、俺は。
向こうはついに獲物を出してきた、俺は?
もし本当に刺してしまったらどうする、皆が俺を忌み嫌うかもしれない。
そうでなくても相手の骨でも折ってしまったら、俺は、俺は__
「いけA、目には目を、歯には歯を、武器には武器をだ!」
野次馬の中の誰だろうか、そんな事はもう分からなかった。
何歩かで大きく後方に跳び、予め矛先を後ろに向けてある愛槍を拾い、構える。
「……大丈夫、俺は悪くない」
“魔法の言葉“を唱える。
俺は悪くない、そう、武器を拾えと言ったあの人が、誰なのか分からない彼奴が__悪い。
「ふッ!!」
もう既に迫っている相手の懐に潜り、槍の持ち手を大きく突き出す。
回転を加えたそれは確かな感触を残す事無く、空を切る。
首元に迫る相手の左手、それを認識する前に左側に槍を薙ぐ。
相手の指が俺の首元に掠り、小さく痛みが走る。
体制を崩して呻き声をあげながら地に手をつく相手、槍の勢いに巻き込まれて揺らぐ体を倒さぬようにと此方も左足を大きく踏み出してバランスを保つ。
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作者名:イル@初心者 | 作成日時:2016年2月29日 3時