【全員主人公】愛されたい者、必要とされたい者 (ページ7)

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「……やあ」

亦幾分か後の日の話。
薄く笑い乍片手を挙げ、ひらひらと振って挨拶する。
その対象は香本卓也。
以前の僕なら確実に自分から話しかけはしなかっただろう。が、昨日の今日で親近感でも湧いているのか、はたまた気紛れかは分からないが＿＿兎に角“何となく“声をかけてみた。

「！！……やあ、どうしたの？今日はご機嫌みたいだけど」

にこにこと嬉しそうな笑みを浮かべ乍挨拶を返してくる。
嬉しそうなのはきっと、……昨日のアレを聞く限りは、今までは冷たい態度を取っていた僕がいきなり笑顔で挨拶をしたから、なんだろうが。

「ご機嫌？僕は何時もこんな感じだと思うけど？」
「あはは、そうかな？」

他愛無い会話、彼が望んでいるのはこれじゃない。それくらいは分かっている。
＿＿愛、を求めている。真実の愛を。
まるで僕の様で僕じゃない、なんて頓珍漢な事を考えてしまう。
そう、矢張僕と彼は違うのだ。彼は純粋な愛だけを、僕は淀んでいてもなんでも良い、兎に角“必要とされる事“を必要としている。
ほら、全然違う。彼は美しく、僕は醜い。

「……今日は一緒に教室に行こうか」

にこり、何時もの様な笑み貼り付けて。
彼は、君はそれに気付いてか気付かずか、亦嬉しそうな笑顔を浮かべ乍頷く。

「うん、そうだね。早く行こう！」

＿＿ごめんなさい、を言う相手が増えたなぁ。
何処か他人事の様に考えながら彼の一、二歩後ろを歩く。
余り話す事が少ない＿＿僕が避けているだけなのだが＿＿僕らが談笑しながら教室に入ってきたのに気付いた一人二人は、興味深そうに「仲良くなったのか」なんて聞いてきた。
彼はどう答えるべきか悩んでいるが、僕は直ぐにこう言った。

「何を言っているんだい、僕達は前から仲良しだよ」

何時か、こうなれたら良いな。
そんな願いを込めた言葉を、少しでも本当の笑顔になっていれば良いな、と思う表情で。