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今は昼休み。君が帰ってくるのは明日。
外のベンチにごろりと寝転がっていると、溝が此方にやってくるのが見え起き上がる。
「……どうしたの、君から此方に寄ってくるなんて珍しいじゃないか」
「……彼奴」
「彼奴?ああ、香本の事?香本なら明日には帰ってくると__」
「違う、……訳じゃないけど、やっぱり違ぇ」
何を言っているんだ彼は、と首を傾げて次の発言を待つ。
彼は頭をがしがしと掻けば止めた、と小さく呟き、舌打ちして言葉を紡いだ。
「……今度足打ってみろ、ぶっ殺すからな」
「そ、……それが言いたかったのかい?」
思わず拍子抜けしてしまった。
この間のはついにカッとなってしまっただけであって、元からもう一度あの過ちを繰り返す気など毛頭無い。
態々言いに来るほど痛かったのかと思うと笑みが溢れた。
「あぁ?テメェ、何笑ってんだよ。ぶっ殺すぞ」
「ちょっと、足打たなくても殺されるじゃないか」
どっちかにしてくれ、なんて笑えば彼は不機嫌そうに、如何にも気に入らないといった様子で去っていった。
その彼の背を見送れば再びベンチに寝転がる。
空を流れる青い雲、滑空する小さな鳥。
平和で、静かで。
__でも、これを気に入らない自分がいる。
「話す人が居ない、触れる人が居ない、利用してくれる人が居ない……誰か、誰でも良いから」
帽子を顔の上に乗せ、両手でぐしゃりと掴む。
亦必要とされたい癖が始まってしまった。そうか、ここ最近は人と話す事が多かったから。
以前ならこういう時の俺と違って常時誰かに必要とされている香本が大嫌いだった。
けれど、今ではこういう時だけ都合良く出兵すら求めてしまう自分が憎い。気持ち悪い。
「自己嫌悪したって、何も変わらないんだけど」
ぽつりと呟いて何事も無かったかの様に立ち上がる。
帽子を頭に乗せれば、笑みを浮かべて教室に向かって歩き始めた。
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作者名:イル@初心者 | 作成日時:2016年2月29日 3時