春を知らない君の為

11 years ago ~summer~ ページ5

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「剛典〜、見てこれ。大っきい！！」








水玉のワンピースに、赤いリボンの麦わら帽子




両手いっぱいに、大きなスイカを抱えてうちにやって来たA。









今年もやっぱり水玉のワンピースがお気に入りらしい。









「A重そう。貸して？」









この時はもう分かってた。






Aは大好きな女の子。



一番、大切な女の子。





他の子とは違う、特別な感情を抱いてて



それが好き。ってことだってことも分かってた。









「ふふ、甘いねぇ」








庭のベンチに腰を下せば



2人で足をぶらぶらさせながら、冷たいスイカを頬張る。







「…あっ、」





「ん？」





「たね、飲み込んじゃった…」






「もう。また？

Aのお腹の中、スイカがなるね」







「い、嫌だ！！！」









俺の言葉、一つ一つに反応する




素直なAがどうしようもなく可愛くて









「ははっ、ごめんごめん。

嘘だよ。ほらA、泣かないで。」






「…ほんと？嘘？」






「うん、嘘。」








クラスのすぐ怒る女子とは違う。




Aは滅多に怒らない。






「なんだぁ、よかった〜」







ほら、こうやって可愛く笑うだけ。





クラスの女子がみんな、Aだったらいいのに。って、





それもなんだか嫌だけど





Aみたいに、笑っていればいいのに。









「剛典？」







「Aは可愛いね。」







ふっ、と俯いたけど





いつもは白くて小さな耳が、真っ赤になってる。






それでも、








「剛典もかっこいいね。」









やっぱり、嬉しそうにこっちに笑顔をみせるから





そんなAがどうしても可愛くて








こんな約束、きっと大人たちは笑うけど








Aは俺が守ってあげるよ。







いつもそう、心で約束してる。






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