春を知らない君の為

16years age ~spring~ ページ16

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『剛典！お誕生日おめでとう。』





真っ白なケーキを持ってお祝いしてくれたAを思い出す。



飽きもせず、毎年毎年。








成長するにつれて、もらう祝いの言葉も増えて


もらう物も増えて高価になったり






でも、そんな今でも一番欲しいのは

彼女が作った真っ白なケーキだ。




ううん、違うな。




貰った俺より嬉しそうな顔をしてるAの表情が、どうしょうもなく愛しかったんだ。









ー「剛典、ご飯〜」








相変わらず母さんは、誕生日にはご馳走を用意してくれて、





それもまた、あの時はAも。

って思い出させる。






そんなこと絶対に母さんには言えないけど。



急に離れた俺たちに対して、

思ったことがある筈なのに、黙って見守ってくれてる母さんには感謝してるから。









下に降りると、リビングいっぱいに食欲をそそる香りにが広がって





今年は何に力いれたのかな、なんてテーブルに目を向けた時、









「…母さん、これ」








テーブルの真ん中





懐かしい、真っ白なケーキ


一瞬でAの笑顔を思い出させるそれ







ー「ふふ、気付いた？
懐かしくて、びっくりしちゃったんだけど…

Aちゃんが、さっき届けてくれてね」





「A、」







今まで堪えてた色々な思いが、溢れ出す



怖くて声に出せなかった君の名前




久しぶりに声に出すと、震えて


それなのに胸が熱い。








「いつ、」





ー「ん？」






「いつ来たの、A

だいぶ前？それとも…」






心臓がうるさい。


何を思ってAはこんなことしたんだろう。


考えれば考えるほど期待してしまう。









ー「剛典、落ちついて？

さっきよ、10分前くらいかな…」







母さんの言葉を聞いた瞬間、リビングを飛び出して


自分の格好も気にせず外に出た。





すぐ隣、彼女の家の扉に立てば足も

インターフォンに伸ばす指も震えて






最後にここに立った日を思い出すのに時間がかかった。







いいんだ。あの頃のように笑顔で迎えてくれなくても





ただ、ただ





「はーい…っ、剛典、」





「A」





ずっと名前を呼びたかった。






「…きゃっ、なに、」








こうして抱きしめたかった。









「A、

すごく会いたかった。」







俺は今でも、








今でも君が大好きだ。








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