【否・求不得苦】 ページ22
耳に届いた言葉に、間抜けな声しか出て来なかった
ここは国内でも有数の桜の名所
今は花見シーズンという事もあり、人だって押し寄せるはずだ
ただの休日、ただのドライブに、こんな事をする人だっただろうか
そして過ぎる、必ず来る「未来」と「運命」
あぁ、やっぱりそうか
だから急に出掛けようなんて言ってきたんだ
今までこんな風に、外に出かけた事は無かった
こんなにも色んな場所に連れて来てくれたのは、そういう事なんだろう
俺達には、必ず「最後」が来る
その「最後」を決めるのは俺ではない
遅かれ早かれ、確実にやってくる「最後」を拒む権利を俺は持っていない
優しくて、押しに弱い人だから、俺との「最後」を、この美しい夜桜で彩るつもりなんだろう
俺がこの先、この桜にすがれるように
思い出を擦り付けたいのだろう？
貴方は、優しすぎるよ
受け止め、覚悟した瞬間に立ち直り自立していく身体
震えの止まった手で腕の辺りを押し返し、｢もう大丈夫｣と呟く
もう二度と、貴方に触れられなくなった瞬間
俺の前に立ち直した貴方は、ジャケットのポケットへ手を突っ込むと俯いてみせた
そうだよな、なんて切り出すか、断ち切るのか、言葉につまるよな
もう二度と、話しかけたりしないから
俺に、言わせて欲しい
｢もう、駄目だな｣
｢…え｣
｢もう、俺と居たら駄目だ
…俺が…俺がお前に執着したせいで15年も時間を無駄にさせてしまった
…金ならいくらでも払える。でも俺がお前から奪ってしまった時間を返す事は出来ない
本当に、ごめんなさい。……本当にごめん、なさい
でも…嬉しかったんだ
初めて俺を一番に慕ってくれた、こんな俺を親友と言ってくれた、こんな俺に15年も時間をくれた、ずっと一緒に居てくれた
俺には、お前が全部初めてだった
お前の優しさと弱さに漬け込んで、勘違いしてた
…今まですまなかった、3日以内には完全に出て行けるようにするから｣
自分でも驚く程に冷静だった
冷えきった頭と心は俺を大人にしてくれたのだと、そう感じた
深々と下げた頭、視線の先に見えた相手の足先はピクリとも動かず、その場に立ち尽くしてくれていた
ゆっくりと顔を上げ、必死に口の端を持ち上げる
大袈裟に目を細めて、相手の顔を見ないように徹した
絶対に泣くな、俺
振り返り、ライトアップされた桜を見て思った
美しすぎる最後だと
あぁ、結局「愛した」と言えなかった
この意気地無しが
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 69人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
塩味(プロフ) - トアさん» コメントありがとうございます。いやほんとですよね、驚かせました。笑 嬉しいお言葉本当にありがとうございます！ 鼻をほじりながら待っていてくださると幸いです…。 (2020年3月17日 2時) (
レス) id: 82c0f8e0d9 (このIDを非表示/違反報告)
トア(プロフ) - 2年越しに更新あって驚きましたw自分もこの2人が結ばれるところを見たいと思ってました(切実に)。なのでとても嬉しいです。勝手に楽しみにしてますね！お気に入りが外せないくらいこの作品が大好きです。 (2020年3月16日 21時) (レス) id: 8b0257a1d4 (このIDを非表示/違反報告)
塩味(プロフ) - みのさん» コメントありがとうございます！私の作品で涙を流して頂けたなんて、とても光栄です。これからも応援していただけると幸いです。ありがとうございました！ (2018年3月4日 8時) (レス) id: d356dd4e6c (このIDを非表示/違反報告)
塩味(プロフ) - Teyさん» コメントありがとうございます！ そんなに素敵な言葉を頂けるとは…書いて良かったと凄く思います。これからも読んでいただけると幸いです。ありがとうございました！ (2018年3月4日 8時) (レス) id: d356dd4e6c (このIDを非表示/違反報告)
みの - 本当にいいお話でした。 涙が出ました。 これからも頑張ってください (2018年3月4日 0時) (レス) id: 3c8a2f8e50 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：塩味 | 作成日時：2018年2月16日 23時
