・着衣水泳大会 ページ16
side河村
福良を救い出すためには…どうにかしてこのガラスを、割らなくてはならない。しかし、これだけの量の水を溜めている水槽だ。金槌があっても割れるかわからない。
「みんな見てください！ドアが！」
こうちゃんが叫んだ方を見ると、さっきまで無かったドアがあった。たぶん次のだな。プレートには…
「nothing？」
無い…？
僕が首を傾げていると、伊沢が言った。
「nothingか＿。じゃあ…
あけるためには、蹴れば良いんだ！」
「蹴るって？」
伊沢は指で4を作り
「nothingに続くのはKick、Scream、Yank、Keepの四つだ。ここはKickだったんだよ！」
その単語は、伊沢の話で聞いていた…
「部屋の名前！？」
「そう！」
「…やってみるしかねーな」
やらないよりかは良い、と須貝さんが言った。
僕らは力任せに蹴った。
すると、いくら殴っても割れなかったガラスに、ひびが入った。
「離れろ！」
小さな穴、5つから水が溢れ出す。そして、穴の周りのガラスから順に、大きな音を立てて割れた。
「福良！！」
一気に浸水した部屋を泳いで、福良を抱えた。
「須貝さん助けて〜！」
「とりあえずどっか掴まれ！」
山本は左の道に押し流されていた。巨大水槽にあった水は、水族館の全体的に行き渡ったが、1.3メートルは浸水している。大問題だ。
「やべぇ！ドアが開かない！」
そう、ドアが開かない。
「排水できんの！？」
「ちょっ須貝さん歩くの速い！動きづらいって〜！」
須貝さんと山本の漫才を見ていると、福良が咳き込んだ。
「福良！起きた？」
「ん゛ん…？」
みんなが福良のもとに集まる。
「あ、河村…。良かった、でっかい河村だぁ」
「でかいは余計かな」
本物の福良だ。緊張が和らいだ。
「ねぇ河村、超寒いんだけど」
「あぁ…ずっと水に浸かってたし、さっきまで…」
「__さっきまで…？」
福良は首を傾げて僕を見た。僕は「何でもない」と言うしかなかった。
「福良のためにも…水をどうにかしないとな」
伊沢が話題を変えてくれた。
さて、この大量の水をどうしようか…
作者から
【鬼屋は誘う】と【暗夜は続く】完結しました。ありがとう！！
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作者名：MOKKA | 作成日時：2023年11月22日 21時
