・SAN値チェックです。 ページ13
side河村
扉の向こうは狭かった。何だ?と思って駆け寄ると、壁なのか塀なのか…とにかく高い壁があった。左側に道がある。その先も似たような景色。
勝手に歩き回った僕は後悔した。
「…迷路だ。単純な、迷路だ…」
ゴールの位置が分からず、スタート位置も見失った僕には絶望的だった。上から覗くことも考えたが、2メートル半はある壁を登ることはできなかった。
「もしかして歩き回るしかない……?」
僕が変な覚悟を決めた、その時だった。
…これが良いことだったか、悪いことだったか分かりにくいが、その時の僕は間違いなく喜んでいた。
足音がした。絨毯の上を歩くような音が、こちらに近づいてくる。
音が止む。
「河村っ!?」
福良の声だ____外は黒いけど声がする…
「河村、拓哉……」
何故フルネームで呼ぶ____
明るくなった外側を見た。そこには遥かに大きい福良が居た。
「福良!?」
「河村…っこれ!何で…!?」
僕の声は外に届いていなさそうだった。そこで一つ、考えが浮かんだ。透明な壁、透明な床、透明な天井…
これは、あの水槽みたいじゃないか?
福良に言いたいことが有るが、外に声は届かないらしい。スマホの電話を立ち上げる。今度こそ…
ヴヴヴヴゥ
バイブのでかい音がした。
「あ、河村!なんで、そん中にいるの……」
「あの扉開けた先の、先? 今、2個目の部屋なんだけど…」
「__あの扉って何……?」
「え?」
思考が停止した。
「お前が、ドアノブに手をかけちゃって…それで…」
「…僕、気づいたら此処のソファに居たんだけど」
僕ら2人とも、目が開きすぎて怖い顔をしていただろう。
「山本とお化け屋敷内で合流して、それでこの水族館に…来たって…」
「みんなが全く帰って来ないから、見に行って…」
「それじゃあ、福良が……2人に…」
「お化け屋敷に入って、倒れた河村を見て…そこから水族館に居て…って、僕が2人!?」
「じゃないと、辻褄が合わない」
一体いつからドッペルゲンガーが出現したんだ?
「__山本が、福良と会った時点で既に…?」
「…違う、福良が居たってこと?」
手で口を触れたまま、頷いた。
「お前は、福良拳だよな?」
声が震えた。
「うん。僕は福良拳。手元には、証拠がある」
そう言ってスマホを僕に見せた。確かに…同じ形のスマホがあっても、電話をかけて繋がるのは福良しかいない。
「そうだな。…ところで福良、この迷路解いてくんない?」
複雑だけど、上からみたら瞬殺らしい…
作者から
【鬼屋は誘う】と【暗夜は続く】完結しました。ありがとう!!
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作者名:MOKKA | 作成日時:2023年11月22日 21時