【QK】夕焼ミステリー (ページ29)

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17日目ページ29

by須貝

澄み渡る青空の中に白い白い建物が見える。奥にはビル群が連なり、目の端には緑が映った。
「須貝さーん」
名前を呼ばれる。立ち止まっていたことにようやく気づいた。
「あぁすまん」
手に抱えた荷物を車に詰め込み、後部座席に座った。右隣りにはいつもの服を着た伊沢がいる。車が動きだした。
「あの病院ともお別れだねぇ。もう２度とお世話にならないように気をつけるよ」
「マジでそうしてくれ」
…もうあの病院に通うことはないだろう。見慣れた景色が遠ざかっていく。
　今日、伊沢は退院した。

伊沢の入院生活は割と短かった。意識不明のくせに左半身は傷一つ無く無事だったとか。打ち所が悪かっただけとか。ホント信じられん。奴曰く『普段の行いが良いんだ』だったり『鍛えてるから』だったりとドヤ顔で言ってくる。
まあ、無事に越したことはないが。
［病院出た］と福良に送る。
すると直ぐ［わかった。準備は万端だから］と返信。因みにファンはライブ配信を知らない。丁度今、待機場所ができたくらいだろう。何にせよ伊沢に知られてはいけないサプライズパーティーだからね。
荷物を下ろすため伊沢の家に寄った後、直行でオフィスへ向かった。
「あ～久しぶりだなぁ」
「でしょうね」
伊沢は病み上がりとは思えん程、素早く車を降りた。続けて俺も降りて、入口の前まで行く。
「じゃ、開けるぞ？」
「おう、早くしないとこうちゃんが飛び出てくるかもな」
「あっはは！そしたら早く開けないとな」
伊沢は笑いながら鍵を回した。

ガチャ

ドアを開く。