【QK】夕焼ミステリー (ページ21)

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12日目ページ21

by須貝

紙袋を持った乾が玄関口に見える。正面玄関は病院に寄るのが日課となってしまった俺には見慣れた風景。乾はまだ2回目で迷ったという。少し空気が重たいのはやっぱり雨雲のせいだろうか。そんなことを考えて、空を見上げていると
「最近ずっとくもりですね」
と乾の声がした。
「…だよねぇ。行こう乾」
これはいつにわか雨があってもおかしくないな～と思いながら病室へ向かった。

「差し入れ持ってきましたー！」
伊沢がニコニコ乾に危機感を覚えたのが分かった。意外と顔に出てるんだな。
「…その紙袋の仲間は何？」
「あっ箱の中身は何だろな、します？」
「箱じゃねぇだろ」
とりあえず紙袋からタッパーを出す伊沢。何かわからないというような顔をした。
「…なに、ガラスでも入ってる？」
「残念ながら屈折で見えなくなるあれではありません」
そう言いながら、同じようなものか…？と思ったのは内緒である。
「じゃあ…水だけ？」
「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれません」
乾がニヤニヤして言った。まぁそうだよな。
「開けて下さい」
水が溢れるのが嫌なのだろう。体勢を変えてテーブルの上に置いた。そして開封。

「あ、なんか入ってるね。えっもしかして__あの掴める水？」
「「正解！」」
「持ってみていい？」
「そりゃもう。お好きに」
伊沢は珍しそうに、ぷにぷにと触っている。
「…これって食べれるやつだよね？」
「あっそうですよ！」
乾の顔が輝いた。そんなに食べて欲しかったんか。

「水貰ってもなぁ…明日食べるよ」
一気に乾の表情が変わった。不貞腐れている。
「しゃーねーって、なんせ水だし」
「まあいいですけど。絶対食べてくださいね！」
捨て台詞みたいにそう言うと乾は出ていった。
「俺も帰るね」
…十分、伊沢の様子や雰囲気が掴めたので…
「須貝さん」
「ん何？」
帰ろうとドアへむかうと伊沢に呼び止められた。
「…どうですかね、オフィスは」
「みんな頑張ってやってくれとるよ？お前が居ないと寂しそうだけどな」
「福良やこうちゃんは…？」
「なんで福良とこうちゃんなん？」
「気になったからだけど」
「えっと、変わりはないよ。2人とも仕事に追われてるけど」

「そうですか」
____________________(観察日記)
その一言は“聞きたい話はそれじゃない”と言われたようだった。俺を捉えた目は俺達を見透かしているようだ…
今日の伊沢は、様子も雰囲気も変わっている。断言できる。一体何があったんだろうか。